法人税の税務調査の流れと調査対応で気を付けるべきポイント 

税務調査手続きは国税通則法で規定されているため、全国どの税務署で税務調査を受けるとしても、調査の流れは基本的に同じです。
ただ実際の調査のしかたについては、税目ごとに違う部分もありますので、今回は法人税の税務調査の流れと、調査対応時に注意すべきポイントについて解説します。

税務調査は事前に連絡があるのが原則

調査担当者が事務所等に訪れ、調査が行われる「実地調査」は事前連絡が入ります。
無申告や税務署からの連絡に応じないなど、調査に非協力的なケースを除き、無予告で税務調査が実施されることはありません。
実地調査の事前通知の方法は法令で規定されていませんが、国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」では、電話で事前通知を知らせることを原則としています。
電話での事前通知が困難である場合には、書面での事前通知を行うこともありますが、納税者からの要望で書面での通知を行うことはありません。
顧問税理士を付けている会社においては、税務署へ提出する税務代理権限証書に事前通知を税務代理人(税理士)へ行う旨の同意の記載をすることで、調査の連絡は税理士に対して行われます。
そのため、納税者が税務署と直接やり取りする機会を極力抑えたい場合には、税理士に依頼するだけでなく、事前通知等を税理士に行うことへの同意も必要です。

税務調査の実施日は調整することが可能

事前連絡で税務調査を実施する旨が伝えられた際、調査日の日程調整を行うことになります。
事前通知が行われた日に調査を開始することはなく、納税者が調査を準備できる体制が整う期間を置いてから調査は実施されます。
調査日の候補は、調査を担当する職員からいくつか挙げられますが、候補に挙げられた日程での対応が難しい場合、対応可能な日を担当者へ伝えることもできます。
調査日を数か月先や1年後にすることはできませんが、任意調査である以上、ある程度の範囲であれば納税者側の要望に応じてくれますので、無理に税務署の申し出に合わせる必要はないです。
ただし、調査の日程調整に一切応じない場合、無予告での調査に切り替えて調査が実施される可能性もありますので、税務調査を実施する旨の連絡がありましたら必ず応対してください。

法人税の税務調査は会社内の会議室等で行うことになる

法人税の税務調査は、会社の一室で行われることが多く、最初から代表者の自宅で税務調査が実施されることは少ないです。
調査担当者は、会社の会議室等を借りて申告書に関連する資料を調べますので、部外者が立ち入らない場所を用意してください。
また、書類等の保管場所を確認するために、代表者の自宅状況を確認したいと申し出てくるケースもあります。
調査担当者が必要であると判断すれば、任意調査でも自宅への調査を拒否することはできませんので、会社内で調査を完結させるためには、調査担当者が確認する書類等は一通り用意してください。

法人税の税務調査で用意すべき書類等

調査担当者は、法人税の税務調査において、次の書類等の内容や保管状況の確認を行います。

<税務調査で用意すべき主な書類>

  • 確定申告書
  • 総勘定元帳、売掛帳、買掛帳
  • 固定資産台帳
  • 棚卸表、在庫表
  • 契約書、納品書、領収書、請求書
  • 稟議書、議事録
  • 通帳、印鑑

一般的に行われる税務調査は任意調査となっているため、調査担当者が勝手に書類等を調べることはありませんが、調査に非協力的な対応をすると脱税が疑われる可能性もあります。
また、調査担当者が提示を求めている書類を出さないと調査は終わりませんので、最低限の調査協力は必要です。

法人税の税務調査1日目の流れ

税務調査は10時から開始することがほとんどで、16時くらいまでに調査が終わらない場合は2日目に突入します。
個人に対する調査は1日で完了することも多いですが、法人税調査については2日目、3日目に突入することも珍しくありません。
調査初日は調査担当者からの挨拶で始まり、午前中は社長が会社概要を説明し、直近の事業状況についての受け答えを行うことになります。
午前中は会社の概要等の聞き取りだけで終わることがほとんどで、申告書の関連資料を調べる作業は午後からとなります。
調査開始時は代表者も立ち会うことになりますが、調査担当者が資料の調査に入りましたら、会社の経理担当が同席していれば代表者は離席しても問題ありません。
会社の経理担当は、調査担当者からの質問に回答するだけでなく、追加の書類提出が求められた際に適宜応じることになります。
質問に対して即座に回答する必要はなく、確認が必要な事項については日を改めて回答しても差し支えありません。
臨場調査の際、午前と午後の間に1時間程度の休憩が入りますが、調査担当者は外で昼食を済ませるので準備する必要はないです。
国家公務員は「国家公務員倫理規程」により、利害関係者から飲食の接待が禁止されていますので、調査担当者への昼食を用意したとしても断られます。

法人税調査の2日目以降の流れ

税務調査の2日目以降は、1日目の午後と同様、調査担当者は申告書の関連資料を調べます。
資料等をすべて調べ終えますと、調査担当者から税務調査の総括が行われますので、代表者も同席してください。
総括では、調査担当者から調査を実施した際に気が付いたポイントの説明が行われます。
申告誤り等を指摘されることもありますが、その場で修正申告書の提出を求められることはありません。

反面調査

税務署は臨場調査で調べた内容を精査すると同時に、疑義が生じたポイントを解明するために反面調査を実施します。
反面調査とは取引先等に対して調査を実施することをいい、書類等の真偽や申告漏れの有無を確認するために行います。
反面調査が完了すると、調査が終了する流れになりますが、反面調査で新たな調査事項が判明した場合には、再び臨場調査が実施される可能性もあります。

調査終了時の流れ

税務調査が終了する際は、調査担当者から調査結果の説明が行われます。
関与税理士がいる場合は調査担当者から税理士に説明が行われますので、代表者は税理士から調査結果を聞いてください。
申告内容に問題が無ければ申告是認となり、是認通知が交付されます。
一方、申告内容に誤りが発生した場合には、調査結果の内容に基づき税務署から修正申告の勧奨が行われます。
修正申告の勧奨に応じるかは納税者次第であり、応じる場合には修正申告書を作成し、提出することになります。
調査結果の説明に納得できなければ修正申告の勧奨に応じない選択肢もありますが、その場合には税務署が更正または決定の処分を行う可能性が高いです。
税務署(税務署長)の処分に不服がある場合、再調査の請求や審査請求など、不服申立てを行うことができますので、関与税理士と協議した上で対応方法を決めてください。

税務調査で申告誤りを指摘された場合の納付方法

修正申告の勧奨に応じて申告書を提出する場合、申告と同時に差額税額を納めることになります。
修正申告書の提出と本税額の支払いが完了しますと、1~2か月以内に加算税・延滞税の通知が届きますので、適宜納付してください。

まとめ

税務署から税務調査を実施する旨の連絡が入った場合、その時点から調査を回避することは困難です。
任意調査でも調査には応じなければいけませんし、調査を拒んでいると無予告による調査が実施される可能性も出てきます。
税務調査によるリスクを最小限に抑えるためには、顧問税理士を付けることはもちろんのこと、対応のしかたを事前に打ち合わせすることも大切です。

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