税務調査が10年以上こない会社・個人事業主の特徴と注意点

短期間で何度も税務調査の対象となる事業者もいれば、10年以上調査を受けたことがない会社や個人事業主も存在します。
本記事では、税務調査がこない会社・個人事業主の特徴と、調査対策を講じる際に注意すべきポイントを解説します。

会社と個人事業主が調査を受ける確率

会社と個人事業主では納める税金の種類が違いますし、調査を担当する部署も異なるため、税務調査を受ける確率には差があります。

会社が税務調査を受ける確率は30年に1度

会社は税務署に対して法人税を納めることになりますが、法人税の実地調査件数は年間3~4%程度です。
法人が順番に税務調査を受けるとした場合、すべての法人を調査するのに25年から30年かかりますので、10年以上調査を受けていない法人が存在しても不思議ではありません。
一方で、提出された法人税の申告書の中には明らかに税務調査を必要としないものもあることから、利益を上げている会社であれば実際に調査を受ける確率は4%以上あると考えられます。

個人事業主が税務調査を受ける確率は100年に1度

個人事業主が実地調査を受ける確率は1%程度とされていますので、税務署がすべての個人事業主を調査するとした場合、一巡するまでに100年かかります。
個人事業主は税務署に対して所得税を納めることになりますが、所得税の税率は5%から45%までの7段階になっており、課税所得金額が多い人ほど適用税率は高いです。
税務署の立場からすると、所得が少ない事業者を調査したとしても増差税額は多く得られないことから、事業規模の大小によっても調査を受ける確率は変化します。

税務調査に関して勘違いしやすいポイント

世間的に広まっている税務調査に関する情報は、必ずしも正しいとは限りません。
誤った情報を鵜呑みにしてしまうと、それが原因で税務調査の対象となり、追徴税額が発生することになりかねませんので注意してください。

売上が少ない事業者に対しても税務調査は実施される

事業規模が大きいほど税務調査の対象になりやすいですが、売上が少ない会社・個人事業主が調査対象から外れるわけではありません。
売上規模が小さければ増差税額も少なくなりますが、税務調査は申告期限から5年の期間がありますので、複数年分の申告漏れを指摘することでまとまった増差税額を得られるケースもあります。
また、脱税行為をした納税者に対しての調査期間は7年に拡大しますので、不正を行っていれば売上の大小に関係なく、調査を受けることになるので注意してください。

申告内容が正しくても調査が行われることがある

適正に申告していたとしても、申告書だけでは申告内容の適否を判断できない部分もあるので、税務署は申告内容を確認するために調査を実施することがあります。
毎年申告することになる事業者に対しては、不正を防止する牽制の意味も込めて周期的に調査を行うこともあるため、申告内容に問題が無かったとしても税務調査を受ける確率はゼロにはなりません。

税務調査がまだ実施されていないだけのケースもある

無申告の納税者が税務調査を受けていないケースもありますが、現時点で調査を受けていないだけであって、明日調査対象になる可能性も十分にあります。
税務調査を回避する有効な手段もある一方で、実施の有無は税務署が判断するため、調査対策の効果を確認するのは難しいです。
なお、申告内容に誤りが無ければ追徴課税の対象にはならないことから、適正な申告を行うことが最も効果の高い調査対策なのは間違いありません。

調査を受けやすい事業者と受けにくい事業者の違い

税務署はすべての納税者を調査することはできないため、業種・売上・申告方法などを基準に調査対象者を選定しています。

売上や利益が事業者は税務調査の対象になりやすい

事業規模が大きい企業や個人事業主は、税務調査の対象になりやすいです。
法人税と所得税は利益が大きくなるほど税率が高くなるので、納税額も多くなります。
課税所得金額が大きければ、一つのミスを指摘した際に発生する増差税額が増えることから、税務署は売上が大きい事業者を対象に調査を実施する傾向にあります。
一方で、税務調査をまったく受けないことはない事業規模がそこまで大きくない事業者についても、売上が急激に伸びた年分(事業年度)は注意が必要です。
売上が大きくなるほど税金対策を講じることになりますので、税務署は税金対策が法律の範囲内で実施されているか確認するために調査を行うようになります。
売上の伸び率に対して利益率が低い事業者については、経費の水増しが疑われることもあるため、売上高だけでなく、売上の伸び率や利益率が大きい事業者も調査対象になりやすいです。

業種によって調査を受ける確率は異なる

税務調査はランダムに実施するのではなく、税務署の職員が調査対象者を抽出して行いますので、事業内容によっても調査を受ける確率は変わってきます。
税務調査を実施した際の不正割合や、申告漏れとなった所得金額が多い業種は税務調査を受けやすいです。
たとえば飲食店や建築業は不正や申告漏れが指摘されやすい業種ですし、コンサルタント関係も申告漏れが多い業種としてマークされています。
感染症の流行で赤字が発生した事業者は、黒字になった際に赤字申告の内容をチェックされる可能性がありますので、申告書は利益の有無に関係なく正しく作成してください。

無申告の事業者は調査対象になりやすい

事業者は毎年確定申告書を提出しなければなりませんので、無申告であればそれだけで調査対象になりやすくなります。
確定申告書を提出している事業者でも申告内容に誤りがあれば指摘されますし、計算に誤りが無かったとしても、申告内容に疑義があれば調査対象者として選出される可能性があります。

税理士関与の有無でも調査を受ける確率は変わる

税金に関する知識は納税者に差がありますが、税理士が作成した申告書については申告内容がある程度担保されているので、税理士関与の有無も調査を受ける確率に影響が出ます。
法人税の申告のうち80%以上は税理士が関与しているため、税理士が関与していない申告書は、それだけで申告内容を細かくチェックされます。
反対に、所得税の税理士関与割合は20%と低く、多くの個人事業主は自身で申告書作成していますので、税理士に申告書作成を依頼するだけで同規模の事業者よりも調査を受けにくくなります。

調査対策は普段から行わないと効果が薄い

税務署は申告誤りや申告内容についての疑義がある状態で税務調査の連絡を入れますが、実地調査の対象となった納税者は、70%から80%の確率で非違事項を指摘されます。
調査対象者として選定されないためには、適正な申告書を作成し、必要に応じて書類を添付して申告することが重要です。
増差税額が算出される見込みがなければ、調査を実施しても成果を得られないため、調査対象者として選ばれる確率は下がります。
調査対策のしかたが分からない場合には税理士に相談してアドバイスを受け、現在の状況に適した改善策を施してください。

まとめ

10年以上調査を受けていない事業者でも、ある日突然税務署から連絡が入り、税務調査が実施されることもあります。
税務調査が実施されるかどうかは納税者側から知ることはできませんので、追徴課税を受けないためにも日頃から調査対策を講じ、適正な内容の申告書を提出するようにしてください。

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