税務調査官の種類と特徴。会社の事業規模等で調査担当者は異なる

税務調査は、税目や事業規模によって担当する職員が異なります。
基本的に税務署の職員が調査を実施することになりますが、事業規模が大きくなるとマルサが所属する、国税局の職員が調査を担当することもあるので要注意です。
こちらの記事では、税務調査官の種類と特徴、そして調査担当者が異なることで調査方法が変わるのかについて解説します。

税務署の税務調査官の役職と特徴

税務署には調査を担当する部門として、法人課税部門・個人課税部門・資産課税部門が存在しますが、職員の役職・肩書については原則どの部署も同じです。

財務事務官

財務事務官は、国家公務員試験に合格し、税務署に配属された職員が持つ肩書です。
配属して間もない職員が一人で調査担当者になることは少なく、調査経験が豊富な調査官の調査に同行していることが多いです。
他の職員に比べて知識・経験は浅いですが、国税組織は財務事務官を育てる観点から、申告誤りが明確であるなど、増差税額が発生しやすい事案を担当させる傾向にあります。
また、財務事務官だから調査が甘くなることはなく、基本に忠実に調査を遂行するので、小さなミスでも指摘される点には注意が必要です。

国税調査官

国税調査官は、20代後半から30代中盤までの職員が配置される役職で、民間企業であれば主任クラスに相当します。
個人事業主や事業規模の小さい法人については、国税調査官が一人で調査を担当することも珍しくありません。
財務事務官のときから調査担当者として活動している国税調査官は、経験と行動力がありますので、疑問点は徹底的に追求・解明します。
一方で、国税調査官であっても調査経験が乏しい職員も多数存在しますので、国税調査官の役職だけで職員の技量を測るのは難しいです。

上席国税調査官

上席国税調査官は、30代後半から定年までの職員が配置される役職で、民間企業の係長クラスに相当します。
年齢の若い上席国税調査官は、税務調査官としても優秀であり、少しの不正も見逃さず、対応も厳格です。
中高年の上席国税調査官については、税務調査官としての経験がとても豊富なので、あらかじめ不正が行われるパターンや、申告漏れの発生しやすいケースを予測しながら調査を実施します。

統括国税調査官

統括国税調査官は、部門の責任者であり、民間企業の課長クラスに相当する役職です。
年齢が若い統括国税調査官は、将来の幹部候補なので優秀な職員である可能性が高く、年齢が高い統括国税調査官は、税務調査の現場を数多く経験したたたき上げの職員です。
調査の進捗状況等を管理する立場なので、調査の現場に出てくることは少ないですが、調査内容によっては統括国税調査官が調査に同席することもあります。

特別国税調査官

特別国税調査官は調査専門の職員で、一般の調査担当部門では扱うことが難しい事案や、事業規模の大きい企業等の事案を主に担当します。
特別国税調査官が所属する部門(通称:特官部門)は、国税調査官や上席国税調査官が「特官付」として配置されており、特官付の職員は特別国税調査官の指示の下、精力的に活動します。
特官部門は一般部門以上に成果が求められる部署であるため、特別国税調査官が担当者となったときは気を引き締めなければなりません。

その他の役職

規模の大きい税務署には、海外取引を行っている個人・法人を担当する「国際税務専門官」や、一つの税目に囚われず一体的な調査を実施する「総合調査担当特別国税調査官」などが配置されています。
他にも専門部署・職員はいくつもありますが、これらの職員は特に専門性の高い事案を担当することになりますので、一般の方が調査を受ける可能性は低いです。

国税局で調査を担当する部署

国税組織が扱っている税金の調査は、基本的に税務署の職員が担当していますが、事業規模の大きい会社など税務署で対応が難しい事案は、国税局の職員が調査を行います。

資料調査課

国税局の資料調査課は、高額な事案を担当する部署で、「リョウチョウ」とも呼ばれています。
無申告者など、脱税犯を摘発するのが「マルサ」であれば、資料調査課は申告書を提出している高額納税者を対象に調査を実施します。
資料調査課に配属された職員は税務調査のスペシャリストですので、税務署職員よりもチェックが厳しく、全容が解明されるまで調査を終了させません。

調査部

国税局の部署の一つである調査部は、資本金1億円以上の法人や外国法人を調査する部署です。
大企業は経済活動範囲が広く、国際的にも活動していますので、調査部が専門的に対応しています。
また、経済状況や社会構造の変化等に対応するため、先端的取引の実態解明や新たな調査手法を開発し、積極的に取り入れているのも調査部の特徴です。

査察部

査察部は、「マルサ」でも知られている国税局の調査部門です。
脱税犯を摘発するための専門部署であり、一般の税務調査が「任意調査」なのに対し、国税局査察部が実施する調査は「強制調査」です。
強制調査は警察の家宅捜索と同様、裁判所の令状を受けてから実施しますので強制力があり、脱税が摘発されれば逮捕されることもあります。
ただし、強制調査が実施されるのは脱税犯に限られるため、一般の方がマルサの調査を受けることはありません。

一般の納税者が国税局の税務調査を受けることはあるのか

納税者が調査担当者を選ぶことはできませんが、申告内容などから担当する職員はある程度予想することができます。

税務調査のほとんどは税務署職員が担当

税務調査のほとんどは税務署が担っており、財務事務官・国税調査官・上席調査官のいずれかの職員が担当者として調査を実施します。
ビジネス街を管轄している税務署であれば、一般部門の職員が事業規模の大きい法人を調査することがある一方、管内に事業規模の大きい法人が少なければ、特別国税調査官が中規模の法人を調査することもあります。
国税局が調査を担当するのは事業規模の大きいだけでなく、実態解明の必要性が高い事案に限られますので、国税局の職員が調査担当者となる確率は極めて低いです。

税務調査官の役職で実施される調査内容が変わることはない

査察部以外の職員が実施する税務調査は「任意調査」なので、調査時に行われる内容は基本的に同じです。
任意調査では、申告書の関連資料を調べるだけでなく、会社の概要や代表者の交友関係等を質問されます。
調査に関係のないような質問であっても、実際に関連する質問であることが多いので、不必要な回答は避けてください。
なお、任意調査でも調査自体を断ることはできませんし、調査担当者からの連絡に応じないと無予告で調査が実施される可能性があります。

脱税犯は査察が担当する

脱税の指摘は税務署の職員も行いますが、査察部は脱税犯を逮捕することも視野に入れて調査を実施します。
査察部が実施する強制調査は、裁判所の令状が必要となりますので、脱税が行われている事実が判明していないと実行されません。
したがって、意図的かつ高額の脱税を行っていない限り査察部の調査を受けることはなく、税務署の調査で申告誤りを指摘されたとしても逮捕されることはありません。

まとめ

特別国税調査官や国税局職員が調査担当者となった場合、厳しい調査が実施されることが予想されます。
経験豊富な税務調査官と対等に渡り合うためには、相応の税知識が必要ですが、税務署職員と同様、税理士資格を有している人でも能力は千差万別です。
そのため税理士に依頼する際は、税務調査に強いなど、税理士の特徴を把握した上で選ぶことをオススメします。

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