税務調査が終了したその後に調査が再び行われる可能性

税務調査が実施された場合、しばらくは国税当局から連絡が入らないと思われるかもしれませんが、短期間のうちに再び調査が行われるケースもあります。
ただ再調査を実施するためには条件が定められているため、納税者側が対策を講じることで再調査を受ける確率を下げることは可能です。
本記事では、税務調査が終了してから再び調査が行われるケースと、調査を回避するためのポイントを解説します。

税務調査の開始から終了までの流れ

調査担当者が自宅や事務所を訪れて行われる「実地調査」は、原則として調査担当者から事前通知が行われます。
事前通知は、電話等で調査対象者となる納税者に対して下記の事項を通知することをいい、調査対象となった税目・年分以外を調査することは基本的にありません。

<事前通知で伝えられる事項>

  • 実地調査を行う旨
  • 調査開始日時
  • 調査場所
  • 調査対象となる税目
  • 課税期間
  • 調査の目的など

法律上では、事前通知を調査当日の何日前までにやらなければならない等の規定はありませんが、納税者に配慮し、事前通知から調査が実施されるまでには一定期間置くことになっています。
納税者は、事前通知を受けてから調査当日までの間に帳簿書類等を用意することになりますが、顧問税理士が付いている場合には、その間に税務調査の対応方法のレクチャーを受けてください。
調査当日は、調査担当者から納税者に対して申告内容等に関する質疑応答が行われ、調査対象となった年分の申告書および関係書類等を調べます。
調査担当者は調べた事項を税務署内で精査し、必要に応じて取引先や金融機関などに対して反面調査を行います。
調査が終了する際は調査結果の説明が行われ、納税者は結果内容に応じた対処をすることになります。
税務調査は、事前通知から調査が終了するまで1~2か月程度かかるのが一般的ですが、3か月以上かかることもあるので注意が必要です。

税務調査が終了する際の国税当局の行動

税務調査で申告内容の誤りが判明したか否かで、調査終了時の国税当局の行動は変わります。

申告内容に誤りがない場合

税務調査を受けたとしても、申告内容に誤りがなければ追徴税額を支払うことにはなりません。
調査を実施した国税当局は、申告内容に誤りが認められなかった場合、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を、書面(是認通知)で通知することとしています。
是認通知書は、税務署が申告内容にお墨付きを与えるもので、調査対象となった税目・年分の調査を受けることは原則無くなります。
また、申告書を提出した納税者の中で税務調査を受ける割合は限られていることから、是認通知書の交付を受けた納税者については、その後に調査を受ける確率は低くなるとされています。

申告内容に誤りがあった場合

税務調査で申告誤りが判明した場合、調査担当者は調査終了時に申告の誤りを具体的に説明し、納税者に対して修正申告(期限後申告)の勧奨を行います。
修正申告の勧奨とは、納税者に修正申告書の提出を求めるもので、納税者が勧奨に応じて修正申告書を提出した場合、本税だけでなく加算税・延滞税を納めることになります。
申告書を提出し、各種税金を納付すると税務調査は完了です。
ただし、納税者が修正申告の勧奨に応じない場合、税務署は更正処分の手続きに移行しますので、処分内容によっては不服申立てなどの準備が必要です。

税務調査終了時の対応方法

申告内容に誤りが無ければ、納税者側がやるべき手続きは特段ありませんが、申告誤りを指摘された際は指摘内容に応じるかどうかで取るべき手段が変わってきます。

是認通知を受け取る場合

是認通知書は調査を担当した税務署等が作成するものなので、納税者は是認通知書の交付を受けるだけで調査が終了します。
是認通知書は基本的に納税者が交付を受けることになりますが、顧問税理士がいる場合には税理士が代理で受け取ることも可能ですので、税務署との接触を最小限に留めたいときは税理士に委任してください。

修正申告の勧奨に応じる場合

調査結果の説明で指摘された事項に納得する場合は、結果説明の内容に基づき修正申告書等を作成・提出し、追加で発生した本税額を納めることになります。
加算税・延滞税は、修正申告書等を提出・納付が完了すると税務署から通知書が届くため、指定された期限までに支払いを済ませてください。

修正申告の勧奨の勧奨に応じない場合

修正申告の勧奨は納税者に修正申告書の提出を促すものであるため、調査結果の説明に納得できない場合には勧奨に応じないのも選択肢です。
ただ税務署は納税者から修正申告書が提出されない場合、更正処分により強制的に申告内容を修正する可能性があります。
更正処分に不服があるときは、処分の取消しや変更を求めて不服申立てをすることができます。
不服申立てには、税務署長に対して行う「再調査の請求」や国税不服審判所に対して行う「審査請求」があり、いずれの結果にも不服がある場合には訴訟する流れになります。
再調査の請求の結果に納得できないときは、一定期間内に審査請求をすることもできますが、再調査の請求をせず、直接審査請求を行うことも可能です。
なお、いずれの請求手続きにも期限がありますので、税務署が更正処分を行うことが想定される際は、不服申立てを行うことも検討してください。

税務調査終了後に再び調査が行われることはあるのか

再調査とは、実地調査の対象となった税目・年分の申告内容を再び調べることをいい、別の年分または税目を調査する行為とは意味が異なります。

再調査は原則として実施されない

実地調査の対象となった税目・年分の再調査は、適正公平な課税の確保を図る観点から、調査が終了して修正申告書等の提出があった後に行われることは原則ありません。
ただし、「新たに得られた情報に照らし非違があると認められる場合」については、例外的に再調査の実施を認めています。
再調査の実施が認められる「新たに得られた情報に照らし非違があると認められる場合」とは、調査を実施した以外の申告内容や取引から非違事項が把握された場合や、取引先の税務調査において申告漏れ等の情報を得た場合などをいいます。

再調査の対象になれば申告誤りの指摘を受ける可能性が高い

再調査は原則として実施できないものであるため、非違事項があると認められるほどの新しい情報が無ければ実施されることはありません。
したがって、税務署が再調査に踏み切ったときは、非違事項を指摘できるほどの情報を掴んでいる可能性が高く、通常の税務調査よりも申告誤り等の指摘を受ける確率は上がります。

税務調査は1度だけとは限らない

事業者に対する税務調査は複数年分の申告書を調べるため、単年の申告内容に大きな誤りがなければ、短い期間のうちに何度も調査対象となることは少ないです。
ただ実地調査の対象となった税目・年分以外については、調査が終了してからすぐに税務調査を実施することも認められていますので、他の年分を対象として再び調査が実施されることも十分想定されます。
国税当局から納税意識が低いと判断されれば、要注意人物として常にマークされることになりますので、税務調査が終わったとしても気を緩めることはできません。

まとめ

税務調査が終了すれば、対象となった申告内容を再び調べられる可能性は低いですが、他の年分についてはいつ調査対象となったとしても不思議ではありません。
申告内容の誤りを把握した場合、調査を受ける前に修正申告書を提出すればペナルティを最小限に抑えることができます。
短期間で無申告の指摘を受けてしまうと、加算税の加重措置が適用されますので、税金は法律で認められた範囲内で節税するようにしてください。

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