白色申告は税務調査の対象になりやすい?調査を回避するためのポイント

個人事業主は、確定申告書を白色申告と青色申告のどちらかで申告することになります。
白色申告は申告手続きが簡便になるメリットがある一方、税務調査リスクが高くなる点には注意しなければなりません。

白色申告は税務調査の対象にならないは嘘

SNS上では確定申告を、白色申告で行えば、税務調査の対象にならないと情報発信されている方もいます。
しかし白色申告が税務調査の対象にならないのは嘘であり、逆に白色申告者の方が調査対象者として選定されやすい可能性があります。

納税額が少なくても調査対象にはなる

所得税の税率は、課税所得金額が多くなるほど高くなり、100万円の所得漏れがあった場合、適用税率が高い人の方が追加で納める税額は多くなります。
調査担当者は税務調査を実施した成果として、より多くの増差税額が求められていることから、高額所得者の方が調査対象となりやすいです。
ただ個人事業主の税務調査では、3年から5年分の申告書をまとめて調べるため、1年分の誤りが少額だとしても、数年分の誤りをトータルすれば高額所得者の1年分に匹敵する程度の増差税額となることもあります。
また、事業所得や不動産所得を得ている人は毎年申告しますので、税務署は翌年以降に適正な申告書を作成させることを目的として調査を実施することもあります。
そのため、納税額が少ないことだけを理由として、調査対象にならないとは言い切れません。

税務署は提出された申告書をすべてチェックしている

税務署に申告内容の誤りがバレないために白色申告が推奨されていることもありますが、税務署は確定申告書が提出された時点で、一度申告内容をチェックしています。
計算誤りは申告時点で把握されていますし、一般の人から見たら問題のない申告書であっても、税務署の目でチェックすると申告誤りが確認されることもあります。
青色申告と白色申告で申告内容の確認方法を変えることはなく、白色申告が調査を回避するために有効である根拠はありません。

青色申告よりも税務調査の対象になりすい

複式簿記で帳簿を作成していれば、計算ミス等は起こりにくくなるため、複式簿記が必須となっている青色申告に対しては税務署もある程度の信頼を置いています。
白色申告も帳簿作成が必須となっているものの、簡易な方法での帳簿作成が認められていますので、青色申告よりも計算等のミスが起こりやすいです。
また事業所得の損失は他の所得と損益通算することができることから、架空の事業赤字を作り出し、税金を不正に抑える方法を用いる人もいます。
白色申告は青色申告承認申請書の提出等が不要ですので、簡便に脱税する方法として利用されることが多く、その結果、白色申告の方が申告内容を厳しくチェックされています。

税務調査に入りやすい白色申告者の特徴

次のいずれかに該当する白色申告の方は、税務調査を受ける確率が高いです。

申告内容の誤り・不審点が多い

白色申告で申告書を作成していたとしても、申告内容が適切であれば税務調査を受ける可能性は低く、税務調査が実施されたとしても追徴課税の対象になることはありません。
しかし、申告書の記載内容に不備があれば計算ミスや申告誤りの疑いが出てきますし、同じ業種の事業者に比べて経費が多いケースについては、事業形態を確認するために税務調査が行われることもあります。
また脱税等が多い業界は納税意識が低い事業者が多く、事業を継続している方でも税制上の優遇措置がない白色申告で手続きしている方が散見されるので、適正申告を促進するために積極的に調査が実施される傾向にあります。

過去に税務調査で指摘を受けている

税務署が調査対象者を選出する場合、申告書の内容だけでなく、過去の税務調査の実績も判断基準の一つです。
税務調査を受けた経験がある場合でも申告内容に誤りが無く、是認通知を受けた納税者であれば、相応の理由が無い限り、短期間で再び税務調査を受ける可能性は低いです。
反対に、過去の税務調査で申告誤りを指摘された場合や重加算税を課された納税者においては、申告書を提出するたびに申告内容を入念にチェックされますし、少しでも誤りや不審点があれば調査対象として選出されてしまいます。

確定申告書を提出していない

青色申告は申請書を提出することが条件となっていますので、確定申告を行っていない人が提出する申告書はすべて白色申告に該当します。
税務署に申告していなければ、所得が発生していることが見つからないと考える方もいますが、税務署は想像以上に事業に関する情報を収集できる体制を構築しています。
国税組織には情報を収集する専門部署がありますし、事業者等に法定調書提出させることで、取引内容や保有している財産等を把握しているため、税務署に存在を見つからないように事業を営むのは困難です。
税務署に事業実態が見つかり、無申告である事実を確認されれば、税務調査で指摘されますので、事業を営む際は忘れずに申告手続きを行ってください。

白色申告者が税務調査を回避する方法

税務調査を実施する可能性は全体の数%なので、調査を一度も受けたことがない事業者も存在しますし、基本的なポイントを押さえるだけで調査を受ける確率を大幅に下げられます。

複式簿記で記帳を行う

国税当局は電子化だけでなく、市販の会計ソフトを利用しての記帳など、正規の簿記の原則により記帳することを推奨しています。
白色申告は簡易な方法による帳簿作成が認められていますが、確定申告書を提出する際に添付する収支内訳書(青色決算書)は、帳簿の内容がベースとなりますので、帳簿書類を正確に作ることが大切です。
仕訳等に誤りがあれば収支内訳書を正しく作ることはできませんし、税務調査の際に指摘されてしまうので、最低限の簿記知識は身に付けた上で帳簿書類を正しく作成してください。

青色申告で確定申告書を提出する

青色申告の優遇措置は、帳簿を正しく作成し申告する対価として認められているものです。
適用要件を満たせなければ優遇措置は適用できませんし、状況によっては青色申告が剥奪されることもありますので、青色申告者は要件を満たすために適切に書類等を作成しようとします。
調査の優先順位で考えた場合、納税意識の高い業界よりも納税意識の低い業界の方が調査は優先的に行われます。
白色申告は青色申告よりも納税意識が低い人が多く、調査対象となりやすいため、青色申告に切り替えるだけでも、税務調査を受ける確率を下げることができます。
なお、現在白色申告の方が青色申告で手続きを行う場合、対象年分の3月15日までに青色申告承認申請書を提出しないと翌年からの適用となりますので、提出時期に注意してください。

税理士に申告書作成をする

税理士が作成した申告書は、納税者が作成した申告書よりも正確であることから、税理士に申告書作成を依頼するだけで、税務調査は受けにくくなります。
法人税の申告書に税理士が関与する割合は90%前後なのに対し、所得税の税理士関与割合は20%台に留まりますので、法人が税理士に依頼する場合よりも税務調査を回避する効果は高いです。

まとめ

はじめて確定申告を行う場合には白色申告で手続きしても問題ありませんが、青色申告で適用できる税制上の優遇措置を受けられませんので、白色申告を続けるメリットは乏しいです。
税理士に申告書の作成依頼をすれば、事務作業による負担を軽減できるだけでなく、青色申告などを活用しての節税を行えます。
申告内容に誤りが無ければ、税務調査を受ける可能性は大幅に下がりますので、調査対策の観点から税理士に依頼することも検討してください。

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