重加算税の賦課要件と税務調査で重加算税が課されるケース

税務調査で申告誤りを指摘された場合、差額の本税だけでなく、附帯税も納めることになります。
加算税は提出する申告書の内容によって課される種類が異なり、重加算税は加算税の中で最も重い罰則です。
本記事では重加算税の概要と、税務調査で重加算税が賦課されるケースについて解説します。

税務調査を受けた際に課されるペナルティの種類

税務調査で申告誤りを指摘された場合、期限内に適正な申告・納税をしていなかったことに対して加算税・延滞税が課されます。

加算税

加算税は、法定申告期限までに適正な申告をしていなかったことに対するペナルティです。
税務調査で申告内容の誤りを指摘された場合、過少申告加算税・無申告加算税・重加算税のいずれかが課されることになります。
過少申告加算税は、期限内に提出した申告内容に誤りがあった際に課される加算税、無申告加算税は期限までに申告書を提出していなかった場合や、期限後に提出した申告書の内容に誤りがあった際に課される加算税です。
重加算税は、本来納める税金を意図的に逃れようとした場合に課される加算税で、過少申告加算税または無申告加算税の代わりに課されます。

延滞税

延滞税は、納税者が法定納期限までに税金を納付しない場合に課されるペナルティです。
期限内納付を行った納税者との権衡を図る目的や、国税の期限内納付を促進させる見地から、遅延利息に相当する額を延滞税として支払うことになります。
延滞税の額は、本税額に毎年設定されている延滞税の税率および納付が遅れた日数を乗じて算出しますので、納付するのが遅れるほど延滞税の額は増加します。
一方で、日割りで税額計算を行うことから、納付が遅れた期間が短ければ支払う税額を抑えることができますし、延滞税の総額が1,000円未満であれば徴収されません。

重加算税の概要

重加算税には賦課要件があり、税務調査で申告誤りを指摘されたとしても、賦課要件を満たしていなければ重加算税が課されることはないです。

重加算税の賦課要件

重加算税の対象となるのは、次のいずれにも該当する場合です。

<重加算税の要件>

  • 過少申告加算税等の課税要件を満たしている
  • 課税標準等または、税額等の計算の基礎となるべき事実に仮装または隠蔽が行われていた
  • 上記の内容の申告書を提出し、または法定申告期限までに申告書を提出せず、または法定納期限までに納付しなかった

重加算税の税率

重加算税は、どの加算税の代わりに賦課されるかによって適用税率が変わります。
過少申告加算税の代わりに課される重加算税の税率は35%、無申告加算税に対して課される加算税の税率は40%です。
過少申告加算税や無申告加算税とは違い、税額が増えることで税率が上がることはありませんが、短期間で繰り返し脱税を指摘された場合、次に解説する加重措置の対象となります。

短期間に繰り返して無申告または仮装・隠蔽が行われた場合の加算税の加重措置

短期間に繰り返しで無申告や仮装・隠蔽が行われていた場合、加算税の加重措置が適用されます。
加重措置の対象となるケースは、調査による期限後申告等・決定等・納税の告知・納付があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、無申告加算税または重加算税を課された(徴収された)ことがある場合です。
加重分として上乗せされる税率は10%ですので、加重措置が適用されれば過少申告加算税に代えて賦課する重加算税の税率は45%、無申告加算税に代えて賦課する重加算税の税率は50%と、ペナルティが更に重くなります。

税務調査で重加算税が賦課されるケース

税務調査で重加算税が課されるケースは、大きく2パターンあります。

納税者本人が仮装隠蔽を行った場合

仮装とは、経費を水増しするために架空の書類を作成して経費があるように見せかけたり、他人名義で売買するなど、存在しない事実があるように見せる行為です。
隠蔽とは、売上を除外するために売上に関する証拠を処分したり、申告書の作成に必要となる書類等を隠すなどの行為をいいます。
仮装隠蔽行為が無ければ重加算税の賦課要件は満たしませんので、ケアレスミスが指摘された際に重加算税が課されることはありません。
また、仮装隠蔽が行われていたのが一部であれば、その部分に応じて算出された本税額に対して重加算税が賦課され、それ以外の部分に対しては重加算税ではなく、過少申告加算税(無申告加算税)が課されることになります。

納税者自身が仮装隠蔽を行ったと同視できる場合

経営者自身が仮装隠蔽を行っていなかったとしても、従業員等が行った不正行為が納税者本人の行為と同視できるときは、重加算税の対象になってしまいます。
たとえば役員や経理担当者は、脱税行為を行うこと(防ぐこと)ができる立場であることから、これらの人物が仮装隠蔽行為をした場合、会社として脱税する意思があったとしみなされ、重加算税が課される可能性があります。

重加算税を賦課されないための対策

重加算税を賦課されないためには、基本的なポイントを押さえるだけでなく、税務調査時の対応にも注意を払う必要があります。

適正申告は調査対策の基本

重加算税は納税者が意図的に税金を誤魔化そうとした際に課される税金ですので、税務署は申告誤りだけでなく、仮装隠蔽行為の有無も調べています。
税務調査で計算誤りやケアレスミスを指摘されたとしても、意図的に税金を誤魔化す意図がなければ重加算税は課されません。
申告内容が適正であれば、税務署が調査を実施したとしても追徴税額を得ることができないことから税務調査を受ける確率は下がりますので、余計な税金を支払わないためにも適正な申告書を提出することが大切です。

税務調査を受ける前に修正申告書等を提出する

納税者に隠蔽または仮装の事実があったとしても、調査による更正を予知しないで自発的に修正申告書等を提出した場合には、重加算税は課されません。
自主的な期限後申告や修正申告書は、重加算税が課されないだけでなく、加算税の軽減措置の対象になります。
そのため、申告書を提出した後に計算ミス等を把握した際は、税務調査を受ける前に修正申告書等を提出するのが望ましいです。

税務調査の虚偽答弁は厳禁

重加算税の対象となるのは、申告内容を偽装する行為や証拠隠滅する行為だけでなく、税務調査における虚偽答弁も含まれます。
税務調査では税務調査官から申告内容について質問されますが、仮装隠蔽行為の有無を確かめるために、世間話の中にも調査に関する質問事項を含めていることがあるので、嘘の受け答えをするのは厳禁です。
調査担当者は重加算税を賦課するために、質問応答記録書を作成することがあります。
質問応答記録書は、調査時に行われた調査担当者と納税者の質疑応答の内容をまとめた行政文書です。
税務署は重加算税の賦課要件を満たすことを証明する書類として、質問応答記録書を作ることがあり、納税者に記録書への署名を求めてくることがあります。
なお納税者が署名するかは任意であり、断ったとしても罰則等はないので、記録書の内容に同意できない場合には署名しないことも選択肢です。

まとめ

適正申告を心掛けていたとしても申告内容に誤りが生じることはありますし、税務署との見解の相違により経費が否認され、追徴税額を支払うことになるケースもあります。
重加算税は脱税の意思が無ければ賦課される可能性は低いですが、調査時の対応を間違えてしまうと、調査担当者は重加算税を課す前提で動くことも想定されますので、調査時の不用意な言動には気を付けてください。

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