税務調査は開業して何年目に対象者として選定されることが多いのか

長年事業を営んでいれば、いつかは税務調査を受けることになりますし、調査を実施するタイミングは税務署次第です。
しかし、調査を実施する時期はある程度傾向がありますので、今回は税務調査の対象となりやすい事業者の特徴と、開業して何年目に対象となることが多いのかについて解説します。

調査対象になりやすいのは開業して3年を経過した後

税務調査は、開業してから3年を経過すると実施されやすくなります。

税務調査は複数年分の申告をまとめてチェックする

税務署が調査を実施できる期間は5年で、その期間の申告については1度にまとめて調査することが認められています。
特定の年分のみを調査対象とすることもありますが、事業者は毎年申告書を提出しますので、複数年分の申告書を調査対象とすることが多いです。
一方で、税務署の調査担当者は調査対象の申告書が多くなる分だけ1件当たりの費やす事務量が増えることから、3年分の申告書に絞って調査を実施する傾向にあります。
開業してから3年未満であれば調査を受ける確率は高くありませんが、開業から3年を経過すると、一気に調査を受けやすくなるので注意してください。

開業してから数年は申告ミスが発生しやすい

起業した当初は、設備費などの初期費用がかかりますし、経営が軌道に乗るまでは収支が不安定な状況が続きます。
申告書の作成は事業を継続して行けば慣れていきますが、起業して間もない段階では不慣れな部分もあり、計算ミスや申告漏れが発生しやすいです。
税務署も創業当初は申告ミスが多発することを理解していますので、創業して一定期間経過しましたら税務調査を実施し、申告内容を細かくチェックします。
会社員から起業した場合、確定申告書を作成した経験がない人が多く、所得税と法人税では確定申告書の記載内容や添付すべき書類が異なります。
法人税の申告書は所得税の申告書よりも作成するのが難しく、申告誤りが発生しやすいため、法人を設立した際は税理士に申告書作成依頼をするなどの対策が必要です。

今後を見据えて税務調査を実施することがある

現在、税務署に提出されている申告書は法人税だけでも年間300万件を超えており、国税組織の人員的にすべての申告書を調査することは困難です。
そのため国税当局は事業者に自主的な申告を促すために様々な対策を行っており、その中の一つとして周期的な税務調査の実施があります。
申告誤りを指摘すれば申告内容の改善が見込めるため、再び調査を実施する必要性が下がりますし、申告誤りが無かったとしても、周期的に調査を実施することで脱税を抑止する効果が期待できます。
脱税を行った納税者については、要注意人物として調査後に提出される申告書をマークすることができるため、開業して3年から10年の間は税務調査に気を付けるべき時期です。

開業して1、2年以内に税務調査が実施されるケースとは

一般的には開業してから3年を経過した後に税務調査が行われることが多いですが、1年目や2年目に調査対象となるケースもゼロではないので注意してください。

申告内容に明らかな誤りがある場合

税務署は申告書を提出してから数年後に調査することも珍しくありませんが、申告内容に明らかな誤りがある場合、すぐに指摘しないと翌年以降の申告に影響が出てきますので、申告書を提出してから早い段階で調査を行うこともあります。
また一部の事業者については、消費税の課税事業者となるのを避けるために、開業・廃業を繰り返しているケースもありますので、開業後1、2年目だからといって税務調査を受けずに済むわけではありません。

個人事業主から法人成りをした場合

事業を営む場合の選択肢としては、個人事業主として活動する方法と、法人として活動する方法の2種類あります。
最初から法人を設立し、会社を運営する方もいますが、個人事業主としての活動が軌道に乗ったタイミングで法人成りをする方も多いです。
法人成りには節税効果などのメリットがある一方、個人から法人に資産を移転させる際に課税関係が生じるため、法人として活動した直後に税務調査を受ける可能性があります。

他の税務調査と連動して実施する場合

税務調査は対象者の申告内容に誤りや疑義が生じた際に実施されるものですが、調査を行った際に他の事業者の不正を把握することもあります。
税務調査は事業者ごとに実施されるものですが、取引自体に不正行為があった場合には、取引先に対しても連動して調査を行うことがあるので注意してください。

創業年数に関係なく税務調査の対象となりやすい事業者の特徴

開業してからの年数で税務調査を受ける確率は変動しますが、申告誤りの疑いのある事業に対しては創業年数に関係なく調査が行われます。

申告手続きを行っていない

税務署は提出された申告書から情報を集めることもありますが、無申告者に関する情報も常に収集しています。
事業者等に提出が義務付けられている法定調書では、取引の実態を把握することはできますし、他の事業者に対して実施した税務調査の中で無申告の情報を入手することもあります。
無申告者の摘発は、税務調査の重点項目に位置付けられているので、対応が非常に厳しいです。
令和5年度税制改正では、高額無申告者に対する無申告加算税の税率が引き上げになるなど、無申告への罰則が厳しくなっていますので、事業者は期限内に申告手続きを行ってください。

売上が急激に伸びている

所得税や法人税は利益に対して課される税金ですので、利益が多くなるほど納税額が増えることから、税務署は急激に業績が伸びている事業者をチェックしています。
業績をチェックする方法は多数存在し、飲食店やサービス業の場合には、税務調査官が店の混雑具合や1人当たりの客単価を調べるために、内観調査を実施することがあります。
申告書の内容と内観調査で得た情報に大きな相違があれば、税務調査で真偽を確かめるだけでなく、売上除外などの不正行為の有無についても調べますので、業績が良好な事業者ほど気を付けてください。

経費だけが増加している

利益を圧縮するために経費を使う事業者も少なくありませんが、支出がすべて経費として計上できるわけではありません。
個人事業主であれば事業のための支出しか経費計上できませんので、プライベートでの支出を経費にしていた場合、税務調査で指摘を受けます。
法人については、役員報酬や接待交際費は税務調査で必ずチェックされる項目です。
事業に従事していない親族が報酬を受け取っていれば、役員報酬の経費計上が否認されますし、実際には支払っていない費用を接待交際費等として計上している場合、重加算税が課される可能性が高いです。

税理士に依頼するだけで調査を受ける確率は下がる

税務調査を回避する方法として効果的なのが、申告書作成を税理士に依頼することです。
税理士は税の専門家であるため、事業者が申告書を作成するよりもミスは発生しません。
個人事業主の場合、税理士に申告書を作成している割合が低いため、税理士が関与しているだけで調査を受ける確率は下がります。
法人税の税理士関与割合は高いため、税理士に依頼するだけで調査を回避するのは難しいですが、特例の適用誤りを防ぐことができますし、経費の取捨選択が適正に行うことができるなど節税面での恩恵もありますので、税理士に依頼するメリットは多いです。

まとめ

開業した当初に税務調査を受けることは少ないですが、3年目以降に1年目からの申告書が調査対象になる可能性は十分想定されます。
税務調査で申告誤りを指摘されれば本税だけでなく、加算税・延滞税を支払うことになりますし、脱税行為があったとみなされれば重加算税が課されます。
調査対策を講じれば調査を受ける確率を下げるだけでなく、税務調査を受けたとしても是認で終了できることもありますので、創業当初から調査を想定した対策を講じてください。

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