何度も税務調査の対象となる納税者の特徴と再調査を回避する方法

納税者の立場では税務調査がいつ入るかわかりませんし、事業を継続している限り調査を受ける可能性はあります。
税務調査は1回だけとは限らず、状況次第では過去に実施した年分に対する調査が再び行われることもあるので注意が必要です。
本記事では、税務調査の再調査が実施されるケースと再調査を受けないための対処法について解説します。

納税者に対して税務調査が何度も行われるケース

次のいずれかに該当する納税者は、複数回税務調査を受ける可能性があります。

調査終了後に提出した申告内容に誤りがある

事業者に対する税務調査は複数年分の申告書をまとめて調べることが多いですが、連年で調査を受けないとは限りません。
税務調査は、申告内容に誤りや疑義がある場合に実施されるものなので、提出した申告書の内容に誤りがあれば、その度に調査対象として選ばれる可能性があります。
税務調査が終了した後に提出される申告書は、調査で指摘した事項を踏まえて作成されているか確認しますので、申告誤りはもちろんのこと、内容に疑義があれば再び調査対象として選出されることも考えられます。

10年以上税務調査を受けていない

過去に税務調査を受けたことだけを理由として調査対象者から外れることはなく、10年以上税務調査を受けていない事業者は、税務調査が入ることを想定した対策も必要です。
法人税の税務調査を受ける確率は3%から4%程度とされていますので、10年以上事業を続けている企業であれば、確率的にはいつ調査対象となったとしても不思議ではありません。
税務調査は周期的に実施されることもあるため、調査対策を万全に施したとしても調査対象になる可能性があることは認識しておいた方がいいでしょう。

取引先が税務調査を受けている

税務調査は納税者に対してだけでなく、申告内容を確認するために取引先や金融機関等に対して反面調査を行います。
反面調査は取引内容の確認や真偽を確かめるものですので、反面調査の際に申告内容の誤りが判明したとしても、その場で指摘されることはありません。
一方で、取引先が税務調査を受けた際、納税者の申告誤りの事実を確認したときは、取引先への調査と並行して納税者を調査対象者とする実地調査が行われる可能性がありますので、申告誤りに気が付きましたら調査を受ける前に修正申告を行ってください。

税務調査の再調査が実施されるケース

税務調査の再調査とは、調査を実施した年分の申告書を再び調査することをいいます。
税務署は原則として、調査対象とした年分の調査が終了した後に、その年分を対象にした調査を再度行うことはできません。
ただ調査終了後に、下記のような新たに得られた情報に照らし非違があると認められる状況においては、例外的に再調査を実施することが認められています。

  • 他の年分の税務調査を実施中に申告誤りの事実が確認された
  • 取引先に対する税務調査で新たに確認すべき情報が見つかった

「新たに得られた情報に照らし非違があると認められるとき」に該当するかどうかは、直接的に非違事項に関する情報が得られた場合だけでなく、他の情報と新たな情報を総合的に考慮した結果、非違があると合理的に判断できる場合も含まれます。

納税者が再調査を請求することも可能

納税者は、税務調査で指摘された内容に不服がある場合、処分庁(税務署長など)に対して再調査の請求を行うことができます。
「再調査の請求」とは、納税者が処分庁が行った更正・決定や差押えなどの処分に不服がある場合、処分庁に対してその処分の取消しや変更を求める手続きです。
令和4年度における再調査の請求の発生件数は1,533件で、前年度より37.0%増加しており、再調査の請求における認容割合は4.6%です。
納税者の主張が認められる確率は低いと言わざるを得ませんが、全部認容された事例もあることから、状況によっては再調査を申請することも選択肢です。

何度も調査対象者として選出されないためにやるべきこと

事業者が税務調査を一度も受けずに経営を続けることは難しいですが、対策を講じることで税務調査を受ける回数を減らすことは可能です。

適正な内容の申告書を提出することは絶対条件

税務調査を回避するためには、適正な内容の申告書を作成し、提出することが必須事項です。
税務調査で申告誤りを指摘されたことがある納税者は、他の納税者よりも税務署の目が厳しくなりますので、従来よりも正しく申告することが求められます。
申告書の内容だけでは判断できない部分もあるため、申告が適正だったとしても調査を100%回避することは難しいです。
しかし、申告内容に誤りが無ければ追徴税額を支払うことにはなりませんし、税務署は増差税額が見込めない事案を対象に調査することは基本的にありません。
調査対策の方法は様々存在しますが、正しい申告書を作成していることが大前提となりますので、基本的なポイントを押さえながら個々に合わせた対策を講じてください。

依頼する税理士によって調査を受ける確率は変わる

税理士は税の専門家ですので、納税者よりも税知識は有していますし、計算ミス等も発生しにくいです。
納税者自身が申告書を作成していた場合、税理士に申告書の作成依頼をするだけで調査を受ける確率は下がりますので、調査対策として税理士を付けることも選択肢になります。
また、顧問税理士が付いている状態で申告誤りを指摘されたときは、顧問税理士を替えることも検討してください。
税理士としての能力は個々に違いますし、得意・不得意の税目や分野があることから、顧問税理士選びも重要です。

書類添付制度の活用

税務署に対し、適正な申告書を提出する意思表示として、書面添付制度を活用する方法もあります。
書面添付制度は、関与税理士が納税者の代わりに納税者への聞き取りを行い、聴取した内容をまとめた書類を申告書に添付するものです。
書類添付制度は国税当局が推進している制度であることから、制度を利用しているだけで調査を受ける確率は下がります。
また、税務署が書面添付制度を活用した申告書に対して調査を実施する場合、調査担当者は事前に関与税理士へ意見聴取をしなければなりません。
意見聴取で調査担当者が抱えていた問題点が解決されれば、調査は行われずに済みますので、最大限税務調査を回避したいときは書類添付制度の利用も検討してください。

税務調査を受けた際の対応も重要

事業を継続していれば税務署と直接やり取りすることもありますが、税務署からマイナスなイメージを持たれないことも税務調査を回避するためには大切です。
過去の税務調査で脱税を行っていれば要注意人物としてマークされますし、調査時の態度なども資料として税務署内に蓄積されます。
税務調査を受けた際、調査担当者に積極的に協力する必要はありませんが、非協力的な態度を示していると調査後に影響が出てくることもありますので、対応のしかたにも気を付けてください。

まとめ

税務調査を受けて申告誤りを指摘されてしまった場合、その後に提出する申告書の内容はとても重要です。
申告ミスは誰にでも起こり得るものですし、国税当局との見解の相違で申告誤りとみなされることもあります。
調査後に提出した申告内容に問題が無ければ、短期間で再び調査対象になることはありませんので、基本的な調査対策を行いつつ、顧問税理士の意見も踏まえて個々の事情に応じた対策を講じてください。

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