税務調査で税務調査官が注視する納税者のやばい行動・発言

税務調査は対象となる申告によって対応方法が異なり、重要な事案ほど熟練の職員が調査を担当します。
経験豊富な税務調査官は納税者の何気ない行動・発言をチェックしており、何気ない言動から調査が展開されることもあるので気を付ける必要があります。
本記事では、税務調査において税務調査官が注視している、納税者の行動・発言について解説します。

国税当局にとって重要度の高い税務調査の特徴

税務調査は重要度に応じて調査担当者だけでなく、調べる方法も変わります。

実地調査が行われるのは重要度の高い調査のみ

一般的な税務調査は、調査担当者が自宅を訪れ、書類を調べたり納税者に質疑応答を行う「実地調査」です。
実地調査は申告内容だけでなく、申告書を作成する基となった資料等も調べますので、申告書全体を調べる必要がある事案を対象に行われます。
税務調査の方法は実地調査以外にもあり、たとえば「実地調査以外の調査」は、税務署が納税者を呼び出し申告内容の確認や申告誤りを指摘する調査方法です。
確認や指摘する事項が限定されている場合、実地調査以外の調査で調査が行われることが多く、申告誤りを指摘された際は実地調査と同様、加算税・延滞税が課されます。
「行政指導」は、税務署が自主的に申告内容の見直しを促す際に用いられる方法です。
法律上の税務調査には該当しないため、行政指導により提出した申告書は自主申告扱いとなり、加算税は軽減(免除)されます。
申告誤りが軽微な事案については実地調査以外の調査や行政指導が行われますが、申告内容や申告書を作成した資料等を調べる必要があると判断すれば実地調査が行われますので、調査担当者から実地調査を行う旨が伝えられたときは気を引き締めてください。

特に重要度の高い調査は専門部署・国税局が担当者となる

税務調査の大半は税務署の職員が調査担当者となりますが、高額な申告や多額の不正が見込まれる場合には一般部門の職員ではなく、国税特別調査官(通称:トッカン)が調査担当者となります。
国税特別調査官は調査専門の職員であり、調査経験が豊富なので、一般職員よりも調査対応が厳しいです。
事業規模が一定以上の事業者については、税務署ではなく国税局の職員が調査を担当します。
国税局の職員は、税務署の職員以上に調査を実施したことによる成果が求められているため、申告内容の細かい部分までチェックしますし、悪質な脱税犯に対しては査察(マルサ)が調査を担当することになるので要注意です。

無予告で税務調査を実施する

実地調査は原則として事前に電話等で調査を行う旨の連絡があるため、税務署の職員が突然自宅等を訪れ、調査を開始することはないです。
しかし事前に税務調査の連絡を行うことで支障が出る場合には、無予告で調査することも認められています。
無予告調査は例外的に認められた調査方法であることから、納税者に連絡していない状態で調査担当者が自宅等に訪れたときは、申告漏れなどを把握している可能性が高いです。

調査中に質問応答記録書を作成する

質問応答記録書とは、調査担当者が上司等に調査の状況を説明するために作成する書類で、調査事績を残すだけでなく、重加算税を課す際の証拠としても用いられます。
作成の有無は税務調査を実施している最中に調査担当者が判断するため、記録書を作成しないケースもありますが、記録書を作成する申し出があったときは、重加算税を課すことを視野に入れている可能性が高いです。
調査担当者が質問応答記録書を作成した際は、納税者に内容を確認し、署名・押印を求めてきます。
署名・押印を行うかは任意であるため、作成に応じない選択肢もありますが、国税当局は質問応答記録書を作成しなくても重加算税を課すことはできるため、質問応答記録書の作成に応じるかは状況によって判断しなければなりません。

税務調査でやってはいけない納税者の行動・発言

税務調査においては、調査担当者の動向だけでなく、納税者自身の行動・発言にも気を付けてください。

調査担当者に対して敵対的な行動をとる

積極的に調査に協力する必要はありませんが、敵対する行為はマイナスとなりますので、調査に協力する姿勢は見せた方がいいでしょう。
敵対的な態度を示したしたとしても、税務調査官が申告誤りをでっち上げることはありません。
しかし申告内容に誤りが無いか入念に調べるようになりますし、些細な疑問でも徹底的に解明しようとしますので、税務調査を受けるのが不本意だったとしても冷静に対応するのが得策です。

不必要なことまで話してしまう

調査担当者に対して非協力的な態度はマイナスですが、積極的に調査協力する必要もありません。
実地調査は、調査担当者が自宅・事務所を訪れてすぐに始めることはせず、最初に世間話をします。
世間話なので何気ない会話が続きますが、調査担当者は会話の中に調査項目に関連するワードが含まれていないか情報を集めています。
回答として必要以上のことまで話してしまうと、その話から次の質問事項が生まれる可能性もあるので注意してください。

不明確なことを確認せずにそのまま回答する

調査担当者の質問には真摯に回答する一方で、余計なことまで話す必要はありませんし、説明が難しいものはその場で解決しようとせず、後日回答するようにしてください。
税務調査は5年前まで遡って実施することが認められていますので、昔のことを質問されることもしばしばあります。
自分や会社のことであったとしても、数年前のことを明確に記憶している人は多くありませんので、不明確なことをそのまま口にするのはやめましょう。
回答した後に事実が違っていたことが判明した場合、回答を訂正したとしても、誤った回答をした理由や訂正した根拠が尋ねられることになります。

他の事業者と比較しての発言

調査担当者の心証を悪くする行為として、他の事業者と比較する発言があります。
適否判定は法律が基準となりますので、他の事業者の行動が調査に影響することはなく、話題に出したとしても調査結果は好転しません。
一般的に用いられている節税方法が否認された場合、他の事業者も同様の行為を行っているとの抗議は意味がないので、反論する際は法律や判定等の根拠を示すようにしてください。

税務調査における虚偽答弁は最も危険な行為

税務調査は申告内容の真偽を確かめるために実施するので、申告内容に誤りがあれば調査を受けた時点で指摘を逃れることは困難です。
申告誤りの指摘だけであれば課される加算税の種類は「過少申告加算税」ですが、仮装隠蔽行為により申告内容を偽った場合、重加算税の対象となります。
仮装隠蔽行為は、売上除外や経費の水増しだけでなく、税務調査での虚偽答弁も含まれます。
税務調査に非協力的な態度であると、脱税する意思があったとみなされる可能性もありますし、取り繕うために嘘の回答をしてしまうと、その回答が原因で重加算税が課されてしまうこともあるので注意してください。

まとめ

実施する税務調査の種類や調査担当者は国税当局が決めるものなので、納税者がコントロールできるものではありません。
しかし、税務調査での行動や発言は気を付けることができますので、本記事でご紹介した「やばい言動」を行わなければ、重加算税が課されるリスクは大幅に軽減できます。
調査担当者の意見に対して反論するには専門的な知識を要しますので、調査対応に不安がある場合は税理士に依頼し、同席してもらうことも検討してください。

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