国税庁の組織で税務調査を担当する部署の特徴を解説 

国税庁は国税を取り扱う行政機関であり、組織全体で税務調査を実施しています。
ただ税務調査自体は、国税庁の職員が主体となって調査を行うわけではないため、本記事で国税庁の組織の概要と、税務調査を担当する部署の特徴について解説します。

国税庁の組織の概要

国税庁の組織は、国税庁の下に国税局、国税局の下に税務署が配置されています。

国税庁

国税庁は、税務行政の執行に関する企画、立案等を行う行政機関です。
国税局(沖縄国税事務所を含む)や税務署の事務を指導監督する立場にあり、国税庁の下には国税局以外に、税務大学校や国税審議会、国税不服審判所などの機関も存在します。
国税不服審判所は、税務調査等による処分についての審査請求に対する裁決を行う機関です。
国税の賦課徴収を行う、税務署や国税局などの執行機関から分離された特別機関として存在し、納税者は不服申立てを行った際に国税不服審判所と関わる可能性があります。

国税局

国税局(国税事務所)は全国に12か所あり、国税庁の指導監督を受け、税務署の賦課徴収事務について指導監督を行うとともに、自らも一定の賦課徴収事務を行う行政官庁です。
国税局ごとに管轄区域は定められており、管轄は複数(単体)の都道府県を単位として構成されています。
国税局内にも調査を担当する部署は設置されており、税務署で対応することが難しい事案に対して調査を実施することが多いです。

税務署

税務署は国税局の指導監督の下、国税の賦課徴収を担当する執行機関で、全国に524か所の税務署が存在します。
税務署内には内部事務を担当する総務課と管理運営部門、税金を回収する徴収部門、税務調査を実施する課税部門があり、納税者が接する国税関係者のほとんどは税務署の職員です。
税務署ごとに管轄エリアが定められており、都道府県をまたいで管轄している税務署はありませんが、同じ市区町村内で管轄税務署が異なるケースはあるため、申告先の税務署の間違いには注意してください。

国税庁が主体となって調査をすることはない

国税庁の部署には課税部や調査査察部など、税務調査に携わる部署は存在しますが、いずれの部署も事務所や自宅を訪れ、臨場調査を実施することはありません。
調査担当者となるのは国税局または税務署の職員であり、国税局・税務署が実施する税務調査の事務等を指導監督する立場にあるのが国税庁です。
課税部の酒税課や徴収部は、不服申立てに関する事務も行っていますが、基本的に納税者が国税庁の職員と直接対峙することはありません。

国税局で税務調査を担当する部署

国税局で税務調査を担当する部署は、課税部と調査査察部の2つあります。

課税部

課税部の中で税務調査を担当するのは、「資料調査課」と「機動課」です。
資料調査課(通称:リョウチョウ)は、所得税、法人税、地方法人税、相続税等、消費税、印紙税の税務調査を実施する部署で、高額事案や税務署で対応できない難解な事案を担当しています。
機動課は、相続税や贈与税、譲渡所得に係る所得税等に対しての調査を実施する部署で、所属する機動官は税務署に配属され、複数の税務署をまたいで調査することもあります。

調査査察部

査察部は、調査担当と査察担当に分かれており、調査する内容は大きく異なります。
調査担当は、大規模法人等の法人税および消費税に対して調査を実施する部署で、調査対象となるのは、資本金1億円以上の法人や外国法人です。
査察担当は、重要な犯則があると認められる納税義務者を対象に調査を実施しています。
「マルサ」でも知られている査察は、他の部署が実施する「任意調査」ではなく「強制調査」により調査を行うのが特徴で、脱税の内容によっては逮捕される可能性もあります。

税務調査の実務を担当する税務署の部署

税務調査の大半は、税務署の課税部門の職員が実施しています。
税務署の課税部門は、法人課税部門・個人課税部門・資産課税部門の3つで、それぞれに担当税目が割り振られています。

法人課税部門

法人課税部門は、法人税・法人の資産の譲渡等に係る消費税、源泉所得税、印紙税等に対する税務調査を実施する部署です。
税務署で受け持つ調査対象法人は、原則資本金1億円未満の法人で、それ以外の法人は国税局の調査査察部が調査担当となります。
法人税の調査は会社の規模によっては調査する資料等が多く、臨場調査が2日以上行われることもあります。

個人課税部門

個人課税部門は、所得税および個人事業者の資産の譲渡等に係る消費税に関する税務調査を担当する部署です。
臨場調査は1日で終わることが多いですが、調査事項が解明されなければ2日目に突入することがあるので注意が必要です。
個人事業主が税務調査を受ける場合、個人課税部門の職員が担当者となりますが、資産課税部門が設置されていない税務署については、個人課税の資産税担当が相続税等の調査を実施します。

資産課税部門

資産課税部門は、相続税および贈与税、所得税のうち譲渡所得と山林所得の税務調査を担当する部署です。
課税部門の中で最も規模が小さく、資産課税部門が設置されていない税務署も存在します。
相続税の調査は、職員が原則2人1組で実施するのが基本で、経験豊富な税務調査官に若手職員が同行しているケースが多いです。
所得税の調査は主に個人課税部門が行いますが、株式や不動産の譲渡所得については資産課税部門の職員が調査を担当することもあります。

税務調査の大半は税務署職員が調査担当者

税務署は全国524署あるのに対し、国税局(国税事務所)は12か所しかないため、税務調査の大半は税務署が実施しています。
税務署の職員が調査を行えるのは管内の納税者だけであり、納税者が他署に移転した場合には、移転先の税務署職員が調査を行います。
国税局は、事業規模の大きい企業や調査範囲が広い事業者など、税務署単位で調査を実施するのが難しい事案を担当するため、一般の納税者が国税局の調査を受けることはありません。
また、査察の調査は意図的な税金逃れを行っている脱税犯に対してのみ行われるため、申告をしていない場合や、意図的な仮装隠蔽を行っていなければ、査察調査を受けることはないです。

マルサの調査を受けるリスクと逮捕される確率

査察調査(強制調査)は、一般的な調査(任意調査)とは違い、納税者の同意が無くても調査を実施することが認められるなど、非常に強力な権限が与えられています。
強制調査を行うためには裁判所の令状が必要であるため、裁判所に脱税を行っている証拠を提示し、許可が下りた事案に対してしか実施できません。
査察の調査を受けることになった場合、脱税が摘発される確率は高く、査察の調査対象となった納税者の大半は告発されています。
国税庁が公表している「令和3年度査察の概要」によると、査察が実施した調査件数のうち、告発した割合は70%前後で推移しており、令和3年度の告発率は72.8%と高水準です。
令和3年度に判決が出た117件はすべて有罪判決であり、そのうち5人は実刑判決を受けるなど、脱税を行ったことによるリスクは極めて大きいです。

まとめ

国税庁は税務調査に関する指示は行いますが、国税庁の職員が調査担当者として税務調査を実施することはありません。
ほとんどの税務調査は税務署の職員が担っており、事業規模や納税額が多い企業等は国税局が調査を担当しています。
正しい内容の申告書を提出していれば、税務調査を受ける確率は大幅に下がりますので、税務調査対策の一つとして、適正申告に努めてください。

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