税務調査の対象となるサラリーマンの特徴と調査を受けるリスク

サラリーマン(会社員)でも税務調査の対象になることはありますし、申告誤り等を指摘されれば本税だけでなく、附帯税も支払わなければなりません。
本記事では、税務調査の対象となるサラリーマンの特徴と、調査を受けるリスクについて解説します。

サラリーマンに対して税務調査が実施されるイメージがない理由

税務調査は、申告誤りや計算ミスを指摘し、本来納めるべき税金を支払わせることを目的として実施されます。
サラリーマンの多くは確定申告書を提出していませんが、申告手続きの代わりとして勤務先で年末調整を行っています。
年末調整は税金の過不足を精算するための制度で、年末調整が適正に行われていれば確定申告は不要であることから、世間的にサラリーマンが税務調査を受けているイメージがありません。
しかし、年末調整ができない場合や、確定申告で税金の精算を要するサラリーマンが申告手続きを行っていなければ、適正に納税されていない可能性が高いです。
そのため税務署は、このようなケースに該当するサラリーマンに対し、税務調査を実施することがあります。

サラリーマンに対して税務調査が実施されるケース

次のケースに該当する給与所得者は、税務調査を受ける可能性があります。

複数の勤務先から給与を得ている

ひと昔前であれば、1か所からの勤務先から給与を得るのが一般的でしたが、副業が解禁されたことで、複数の会社から収入を得ている人も増えています。
年末調整は、1か所の勤務先から給与を得ている場合を対象とする制度ですので、複数の収入がある人については、確定申告が必要です。
また、1か所からの勤務先から給与を得ている方であっても、収入が2,000万円を超えていると年末調整を行うことができないため、無申告の状態であれば税務署から指摘される可能性があります。

給与以外の収入源がある

所得税は、その年に発生したすべての所得に対して課される税金ですので、給与以外の所得も含めた上で計算しなければなりません。
事業を営んでいる方は事業所得、アパート経営者は不動産所得が発生しますし、副業や仮想通貨取引の利益は雑所得として所得税の計算を行います。
年末調整は確定申告でありませんので、申告期限を過ぎてから確定申告書を提出した場合には、期限後申告となるのでご注意ください。

臨時収入が発生している

サラリーマンが税務署から申告漏れの指摘を受けやすいのが、臨時収入を得た場合です。
生命保険の満期返戻金や金地金の売却など、突発的な収入ほど申告することを忘れやすいため、税務署も申告の有無をチェックしています。
相続財産を取得した際に対象となるのは相続税ですが、相続した不動産を処分した際は譲渡所得税の対象となります。
税務署は法務局から不動産の登記情報を入手しているため、相続により不動産の所有者になったことや、不動産を売却した事実は税務署に把握されていますので、不動産を処分した際は忘れずに申告手続きを行ってください。

税務調査を受けた際に課されるペナルティ

税務調査で申告誤りの指摘を受けた場合、加算税と延滞税のペナルティを受けることになります。
加算税については、税務調査を受けた状況によって適用される種類が変わります。

無申告者に対して課される「無申告加算税」

無申告加算税は、申告期限までに申告書を提出していない場合に課されるペナルティです。
本税に対して15%の税率を無申告加算税として納めることになりますが、50万円を超える部分に対しては20%の税率が適用されます。
ただし、調査通知以後から調査による更正等予知前までに期限後申告書を提出した場合には10%、期限後申告を自主的に行った際の税率は5%と、税務調査で指摘される前に申告書を提出するとペナルティは軽減されます。

申告内容に誤りがあった場合に課される「過少申告加算税」

過少申告加算税は、期限内に提出した申告書の内容に誤りがあった場合、差額で納めることになる本税額に対して課されるペナルティです。
過少申告加算税の税率は10%ですが、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分に対しては15%の税率が適用されます。
ただし、調査通知以後から調査による更正等予知前までに修正申告書を提出すれば、税率は5%に軽減されます。
また自主的に修正申告書を提出したときは、過少申告加算税が課されませんので、申告誤りに気が付きましたら、税務調査を受ける前に申告した方がいいでしょう。
なお、期限後申告書を提出した後に修正申告を行った場合、適用される加算税は過少申告加算税ではなく、無申告加算税ですのでご注意ください。

脱税犯に課される「重加算税」

重加算税は、仮装隠蔽があった場合に課されるペナルティです。
無申告加算税の代わりに課される重加算税の税率は40%、過少申告加算税の代わりに課される重加算税の税率は35%と、加算税の税率は通常の倍以上になります。
計算ミスだけを原因として、重加算税が課されることはありません。
しかし税務調査を受けた際、調査担当者からの質問に対して虚偽答弁をしてしまうと、仮装隠蔽行為があったとして重加算税が課される可能性があるので注意してください。

納付が遅くなるごとに金額が増加する「延滞税」

延滞税は、納付期限までに納税が完了していない場合に課されるペナルティです。
法人税や所得税などは納付期限と申告期限が同日であるため、申告書を提出したタイミングで納税することになります。
税務調査で申告誤りを指摘された際は、納付期限から税金を追加で支払った日までの期間に応じて、延滞税が発生します。
延滞税の利率は、納期限の翌日から2か月を経過する日までは年利7.3%ですが、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの年利は2.4%となっています。
また、納期限の翌日から2か月を経過した日以後の延滞税は、年利14.6%と大幅に上昇しますので滞納するリスクが非常に大きいです。
なお、こちらの利率についても令和4年1月1日から令和5年12月31日までの期間は、年利8.7%と軽減されています。

サラリーマンに対して実施される税務調査の特徴

サラリーマンへの税務調査は、税務署の対応などにおいて、法人や個人事業主に対して行われる調査とは違う場合があります。

税務署に呼び出されて指導されることが多い

法人や個人事業主に対する税務調査は、売上や経費の実態を把握するために「実地調査」が行われることがほとんどです。
それに対し、サラリーマンの税務調査は不動産売却の申告漏れなど問題点が明確であることから、「実地調査以外の調査」が行われることが多いです。
「実地調査以外の調査」は、税務署に呼び出して申告誤りを指摘する調査方法で、税務署が納税者を呼び出す場合、来署依頼の文書を納税者宛てに送付します。
来署依頼の文書には、税務調査を実施する旨の記載と来署日時が指定されており、連絡に応じないと実地調査に移行して税務調査が行われる可能性もあります。
来署依頼を受けたとしても、申告漏れの事実が無ければ追徴課税を受けることはありませんが、申告漏れが事実であれば速やかに申告手続きを行ってください。
なお、申告誤りに課されるペナルティは、基本的に実地調査と同じです。

申告漏れの額が大きければ実地調査が行われる可能性もある

不動産所得や事業所得があるサラリーマンについては、売上等の実態解明を要するため、実地調査が行われます。
実地調査は調査を実施する旨の連絡が入りますが、税務署が連絡をすることで調査に支障が出ると判断した場合、無予告で調査が実施される可能性があります。
調査日は平日のみとなっているため、サラリーマンの方が実地調査を受ける際は休暇を取得するなどの対応を迫られます。
税務署が行う税務調査は「任意調査」ですが、調査自体を断ることはできませんので、調査を受けない対策を講じることが重要です。

まとめ

収入が年末調整済の給与のみの方であれば、税務調査を受ける心配はありませんが、給与以外の収入がある状態で申告手続きを行っていない場合、無申告の指摘を受ける可能性があります。
税務調査の対象となってしまうと追徴課税だけでなく、調査対応のために時間を拘束されますので、臨時収入等が発生しましたら、忘れることなく申告手続きを済ませてください。

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