税務調査でキックバックが指摘されやすい理由と対処法を解説

税務調査ではキックバックの授受を必ず確認し、申告漏れ等が判明した場合には重加算税を課す可能性があるので注意してください。
本記事では、税務調査でキックバックが指摘されやすい理由と、対処法について解説します。

税務上のキックバック(リベート)の扱い

キックバックは、一定期間で大量・多額の仕入れを行った際、取引先が代金の一部を返還することをいいます。
割引や値引きは商品そのものが安くなるのに対し、キックバックは支払いを受けてから払戻しを行うのが特徴です。
キックバックはリベートや割戻と呼ばれることもありますが、契約でキックバックに関する内容を盛り込み、適正に会計処理が行われていれば税務調査で問題になることはありません。
一方で、契約外でキックバックが行われ、申告に取引内容が反映されていなければ、税務調査で指摘を受けることになります。
キックバックの申告漏れが脱税行為とみなされれば、重加算税の課税対象となりますので、取扱いには気を付けなければなりません。

キックバックが要調査項目となっている理由

キックバックは、売上除外や経費水増しとして利用されていることもあることから、税務調査で必ずチェックされます。

脱税の目的で利用されやすい

社会的にキックバックが良い印象を持たれていない理由の一つに、裏取引に用いられていることがあります。
キックバックが行われるかは取引ごとに違いますし、キックバックの条件が不明瞭なケースも多いです。
契約書に記載が無ければ、キックバックで得た金額を売上から除外することが容易ですし、支払ったキックバックの額を過大に計上することで、経費の水増しも可能です。
このように、契約書に記載されていないことを悪用し、脱税目的で利用しやすい性質があることから、税務調査でキックバックの実態確認が行われます。

従業員が勝手にキックバックを行っていることがある

キックバック自体に違法性はありませんが、キックバックに関する取引内容を申告していなければ不適切な申告として指摘されます。
営業マンなどが独断でキックバックを要求した場合、下請会社が経費として計上したキックバックの額と、元請会社が売上として計上した額に相違が発生しますので、正しい取引内容を確認するために税務署は調査を実施します。
従業員が個人的に受け取っていたと判断された場合、法人の収益に帰属しないことも考えられますが、キックバックの帰属先を巡っての争いが発生することになるので、税務上の観点からも社内ルールや規則を整備することが望ましいです。

計上時期を誤りやすい

税務調査では、売上や経費の計上時期が指摘されることも多いです。
仕入割戻は割戻の通知が行われたタイミングで計上することが原則で、事業年度をまたいで割戻金の通知を受けた場合、仕入割戻は翌期の収益として計上することになります。
ただし、契約書に割戻の算定基準が明記されている場合には、仕入れを行った事業年度に計上することが認められています。

税務署がキックバックの存在を把握する方法

税務署は、税務調査を行った際にキックバックの申告漏れを把握することもありますが、調査を実施する前から脱税等の情報を把握していることがあります。

法定調書などの内部資料

税務署は所得税法や租税特別措置法などの規定により、法定調書を提出することを義務付けています。
金融機関にも法定調書の提出義務が課されていますので、取引先と共謀して不正を行ったとしても違う角度から情報が収集され、税務調査で脱税が指摘されるので注意してください。
法定調書は、「給与所得の源泉徴収票」や「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」など60種類存在し、提出された調書には取引内容や取引相手に関する情報が含まれています。
法定調書に記載されている取引が申告されていなければ、申告漏れとして指摘を受けますし、法定調書の内容と申告内容に相違点があれば、実態解明のために税務調査が行われます。

反面調査

税務調査は調査対象となる事業者に対して実施されますが、申告内容や申告書を作成する基となった資料等の真偽を確かめるため、臨場調査が終了した後に反面調査が行われます。
反面調査は取引先などの関係先に対して行うもので、反面調査の対象となるのは取引先や金融機関です。
キックバックの存在は取引先だけでなく、銀行口座の入出金の状況から判明することもあり、反面調査でキックバックに関する新しい情報が出てきた場合、再度臨場調査でキックバックに関する追求を受けることになります。

取引相手・下請会社に対する税務調査からの派生

脱税行為は納税者が単独で行うものだけでなく、取引先と共謀して行われることもあるため、税務調査が連動して実施されるケースも少なくありません。
下請会社が税務調査を受け、キックバックの経費の水増しが判明すれば、元請会社のキックバックの申告状況についても確認が入ります。
適正に申告されていれば問題になりませんが、キックバックの売上除外や過少申告が判明した場合、誤りを指摘されるだけでなく、脱税行為とみなされる可能性も出てきますので注意してください。

キックバックが重加算税の課税対象となるケース

申告誤りに対してはペナルティとして加算税・延滞税を支払うことになりますが、意図的な過少申告・無申告に対しては重加算税が課されます。

仮装隠蔽により申告内容を誤魔化した

税務調査では申告誤りを指摘するだけでなく、仮装または隠蔽行為が行われていたかも論点になります。
仮装は請求書や領収書の数字を書き換えるなどの行為をいい、隠蔽は請求書や請求書の存在を隠す行為をいいます。

<仮装・隠蔽に該当する主なケース>

  • 二重帳簿の作成
  • 申告に関連する帳簿書類の破棄・隠匿
  • 帳簿書類の改ざんや虚偽記載
  • 取引相手等と共謀しての虚偽資料の作成
  • 売上を帳簿書類に記録せずに除外

申告漏れが指摘されたとしても、仮装隠蔽行為が認められなければ重加算税は課されません。
ただキックバックは脱税目的で利用されやすい性質があるため、過少申告や申告漏れが判明すると仮装隠蔽行為が疑われます。
契約書にキックバックに関する事項が記載されていない状況での取引や、キックバックの売上除外や経費の水増しを行っていた事実が判明した場合、税務調査官は重加算税を課す前提で動きますので気を付けてください。

税務調査で虚偽答弁を行った

確定申告書を作成する際、意図的に申告内容を誤魔化す意思が無かったとしても、税務調査で虚偽答弁を行った場合には、重加算税が課されます。
税務調査では調査担当者から会社の経営状態や申告に関する内容を質問されますが、事実と異なる回答をした場合、その回答が重加算税を課される要因になります。
調査担当者からの質問に対し、その場で明確な回答ができないときは、後日回答する旨を伝え、内容を確認した上で正確な情報を伝えるようにしてください。

まとめ

キックバック(リベート)は、仕入価格を抑える方法として用いられることが多い反面、制度を悪用して脱税の手口として利用されやすいため、税務調査で存在を必ずチェックされます。
税務署は、調査前の段階で計算ミスや申告漏れについて情報を把握していることも多く、重加算税を課すために納税者を泳がしているケースもあります。
そのため、キックバックに関する取引内容を適正に会計処理するのはもちろんのこと、契約書にキックバックの内容を盛り込むなど、税務署に疑われる要素は可能な限り取り除いてください。

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