税務調査で修正申告書を提出する際に発生するペナルティとは

税務調査で申告誤りの指摘を受け、修正申告書を提出することとなった場合、本税額だけでなく附帯税も納めなければなりません。
また、調査の結果次第で罰則が重くなるケースもありますので、今回は税務調査で修正申告書を提出する際に発生するペナルティについて解説します。

税務調査で課されるペナルティの種類

所得税や法人税などの税金は、申告期限までに申告・納付しなければならず、税務調査で申告誤りが指摘された際は加算税・延滞税の対象となります。
加算税は適正に申告しなかったことに対する罰則で、申告誤りが発生した状況によって適用される種類が異なり、短期間に何度も無申告等の指摘を受けたときはペナルティが重くなります。
延滞税は期限までに納付が完了しなかったことに対する罰則で、期限内納付の促進と期限内に納付が完了している納税者との権衡を図る目的で設けられているペナルティです。
納付が遅くなるほど延滞税の額は増えていきますので、申告だけでなく納付も速やかに行う必要があります。

加算税の種類と適用されるケース

加算税には「過少申告加算税」・「無申告加算税」・「重加算税」および、「不納付加算税」があります。
不納付加算税は源泉徴収税に対するペナルティであるため、一般的な税務調査で申告誤りの指摘を受けた際は、過少申告加算税・無申告加算税・重加算税のいずれかの対象となります。

過少申告加算税

過少申告加算税は、期限内に申告書を提出後、税務署から申告誤りを指摘された際に課される罰則です。
期限後申告書を提出した後に修正申告を行う際は、過少申告加算税ではなく無申告加算税の対象となるのでご注意ください。
過少申告加算税の税率は、修正申告書を提出した際に納めることになった差額本税額に対し、原則10%が適用されますが、税務調査の連絡を受けた後すぐに修正申告書を提出した場合には、適用税率が5%に軽減されます。
一方で、期限内に納めた税額または50万円のいずれか多い金額を超える部分があるときは、加重分として加算税が5%上乗せされます。
期限内に申告書を提出していたとしても、税務調査で多額の本税を納めることになった際は、課されるペナルティが重くなりますので、申告ミスを減らすことも追徴課税の抑制には重要です。
なお、税務調査の連絡が入る前に申告誤りを把握し、自主的に修正申告書を提出したときは、過少申告加算税は課されません。

<過少申告加算税の課税割合>

通常分 加重分
原則
・10%
期限内申告税額相当額または、50万円のいずれか多い金額を超える部分がある場合
・5%
調査通知以後、調査による更正の予知なしの修正申告の場合
・5%
自主申告
・0%

無申告加算税

無申告加算税は、申告期限までに申告書を提出しなかった際に課される罰則です。
税務調査で無申告を指摘された場合、原則15%の無申告加算税を納めることになり、申告漏れの税額が50万円を超える部分に対しては加重分として5%上乗せされます。
過去に税務調査で無申告加算税または重加算税を課されたことがあるときは、加重分として加算税が10%上乗せされます。
税務調査の連絡を受けてすぐに期限後申告書を提出した際の税率は10%、自主的な期限後申告であれば適用税率が5%になるなど、期限までに申告書の提出が間に合わなかったとしても、自主的に手続きすることでペナルティを最小限に抑えることが可能です。

<無申告加算税の課税割合>

通常分 加重分
原則
・15%
50万円を超える部分がある場合
・5%
調査による期限後申告等・決定等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、その国税に属する税目に調査による無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合
・10%
調査通知以後、調査による決定等の予知なしの期限後申告等の場合
・10%
50万円を超える部分がある場合
・5%
自主申告
・5%

不納付加算税

不納付加算税は、源泉徴収等により納付すべき税額を法定納期限までに納付しなかった場合に課されるペナルティです。
納税の告知を予知しないで、法定納期限後に納付をした場合の税率は5%に軽減されます。
また、法定納期限から1月以内にされた一定の期限後の納付に該当する場合には、不納付加算税が不適用となります。

<不納付加算税の課税割合>

通常分
原則
・10%
自主納付
・5%

重加算税

重加算税は、隠蔽または仮装により税金を誤魔化していたときに課されるペナルティです。
過少申告加算税など、他の加算税に代えて重加算税が課されることになり、無申告加算税の代わりに課される重加算税の税率は40%とペナルティが重いです。
申告漏れとなった税額の大小で重加算税の税率が変動することはありませんが、過去の税務調査で無申告加算税または重加算税が課されたことがある場合には、加重分として税率が10%上乗せされます。

<重加算税の課税割合>

原則 加重分
過少申告加算税に代えて課す場合
・35%
調査による期限後申告等・決定等・納税の告知・納付があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、その国税に属する税目に調査による無申告加算税または重加算税を課され、または徴収されたことがある場合
・10%
無申告加算税に代えて課す場合
・40%
不納付加算税に代えて徴収する場合
・35%

延滞税

延滞税の額は、納付期限の翌日から納付が完了するまでの日数に応じて計算するため、納付が遅れるほど延滞税は増えていきます。

延滞税の計算方法

延滞税の割合は、納期限の翌日から2か月以内は年利7.3%、納期限の翌日から2か月経過した日以後は年利14.6%で計算するのが原則です。
ただ現在の日本の低金利状況を踏まえ、「延滞税特例基準割合+7.3%」が年14.6%(納期限の翌日から2か月以内の期間については「延滞税特例基準割合+1%」が年7.3%)に満たない場合、特例の年利により延滞税を計算します。
延滞税特例基準割合は毎年算出されますので、適用する延滞税の年利は年によって変動する可能性があることから、税額計算の際は対象期間の日数だけでなく年利も確認してください。

<延滞税の割合>

対象期間 原則 特例(※)
納期限の翌日から2か月以内 7.3% 2.4%
納期限の翌日から2か月経過した日以後 14.6% 8.7%

※令和4年1月1日から令和5年12月31日までの期間

延滞税の控除期間の計算

延滞税には控除期間が設けられており、法定申告期限または期限後申告書の提出があった日の翌日から、1年を経過する日の翌日から修正申告書が提出された日の期間は、延滞税の計算期間から控除します。
たとえば、申告期限から1年を過ぎた後に税務調査を受け、修正申告書の提出・納付を行った場合、延滞税の計算の対象となる期間は1年です。
重加算税の対象になるような仮装隠蔽があった場合には、控除期間の適用は認められないため、申告期限から実際に納付が完了するまでの期間に応じた延滞税を納めることになります。

まとめ

税務調査の連絡を受けたとしても、税務調査が実施される前に修正申告書等を提出すれば、課されるペナルティを抑制することができます。
重加算税の対象となるのは仮装隠蔽行為が行われた場合に限定されますので、脱税する意思がなく、税務調査の際に虚偽答弁等を行わなければ、重加算税が課されることはありません。
附帯税を回避するためには、期限内に適正申告および納付することが重要であり、正しい内容の申告書を提出していれば、税務調査を受ける確率は確実に下がります。

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