税務調査の1日。調査連絡から終了までの流れを徹底解説

税務調査では、税務署の職員が申告内容を確認するために、納税者に対して質問を行い、申告書に関係する書類を一通り調べます。
一般的な税務調査の場合、調査を実施する際は事前に連絡があるので、調査日までの間に対策および準備することが可能です。
こちらの記事では、税務調査の連絡から調査が終了までの一連の流れについて解説いたします。

税務調査(実地調査)の流れ

調査担当者が事務所等に訪れて調査を行う「実地調査」の流れは、次の通りです。

税務調査の事前連絡

税務署は例外を除き、実地調査を行う際は調査対象者に対して調査を実施する旨(事前通知)を連絡します。
税務署が無予告で調査を実施することが認められているのは、事前連絡することで逃亡等の恐れがある場合に限られますので、突然税務調査が始まることはありません。
事前通知の方法について法令上の規定は存在しませんが、国税庁は電話による事前通知の実施を原則とします。
事前通知の時期は、納税者が調査を受ける準備ができる程度の時間的余裕を置くこととしていますので、調査の連絡があった翌日に実施されることもありません。
また申告書に税務代理権限証書を提出している場合、税務代理権限証書に納税者の同意があれば事前通知は顧問税理士に対して行われますので、税務署と直接やり取りしたくない方は、必ず税務代理権限証書を提出してください。

日程調整

実地調査を実施する日時は、税務署と納税者の間で調整することになります。
臨場調査は平日の午前10時からスタートし、夕方に終了するのが一般的です。
調査担当者から調査日時の希望を伝えられることが多いですが、都合が悪ければ他の日に変更することも可能です。

税理士との打ち合わせ

調査日が決定しましたら顧問税理士とミーティングを行い、調査対策を練ります。
すでに提出している申告書の内容を変えることはできませんので、事前対策としては主に調査で必要となる書類の確認や、調査担当者の対応について話し合うことになります。
なお、修正申告等に対するペナルティは申告するタイミングで変わりますので、税理士と打ち合わせをする時点で申告誤りを把握している場合は、実地調査が行われる前に修正申告書を提出した方がいいでしょう。

臨場調査の午前中に行われる内容

臨場調査は、午前と午後で実施する内容が違います。
午前中は経営者へのヒアリングや会社概要の確認、直近の経営状態などを聞き取りが行われます。
ヒアリングは申告に直接関係するものだけでなく、経営者の行動や趣味なども聞かれますので、一見すると調査に関係のない質問がされることもあります。
しかし調査担当者は世間話の内容から、経営者の行動等や申告内容の疑義、不審点を見つけようとしていますので要注意です。
たとえば経営者の趣味がゴルフであれば、ゴルフ場を一緒に回る人を尋ねられますし、取引先とコースを回っている場合には、最近の取引状況の有無について質問されます。
世間話の内容と実際の取引内容が相違していれば、申告漏れや脱税を疑われますので、経営者自身が取引内容など会社の全容を把握していることはもちろんのこと、調査担当者からの質問に対して余計な回答はしないことも大切です。

臨場調査の午後に行われる内容

臨場調査の午後は、申告書を作成する際に基となった資料等を調べます。
対象となる書類は総勘定元帳だけでなく、契約書や領収書など、事業に関する書類等すべてです。
積極的に調査協力する必要はありませんが、調査担当者は確認すべき書類をすべて調べ終わるまで調査を終了しませんし、調査当日に用意できない書類がある場合、別日に再度調査が行われることもあります。
調査対象年分の資料をあらかじめ用意しておけば、調査担当者は書類をひたすら確認しますので、早期に調査を終了させるためにも、申告に関連した書類は事前に用意しておいた方がいいでしょう。

反面調査

反面調査は、臨場調査で洗い出した疑問点を解明するために実施します。
取引先や金融機関に調査が入ることになるため、納税者が反面調査の対応をすることはありません。
反面調査で調査担当者が抱えている疑問点が解消されれば、納税者に調査を終了する連絡が入りますが、反面調査で新たな疑問点が発生した場合には、再度臨場調査が行われる可能性もあります。

問題点の指摘

臨場調査および反面調査の結果、申告内容に問題が無いと判断されれば、調査は終了する方向に進みます。
しかし調査により問題点が判明した場合、調査担当者から申告誤り等の指摘が入ります。
たとえば、役員報酬や接待交際費の損金算入についての指摘があった場合、損金に算入したことが適切であることを説明しなければなりません。
調査担当者が説明に納得すれば損金算入は認められますが、納税者の説明に納得しなければ損金算入は否認されてしまいます。

調査結果の説明

税務調査を終了する場合、調査担当者は納税者に対して調査結果の説明をしなければなりません。
調査結果の説明では、申告内容の是非だけでなく、修正申告書等を提出する場合の納税額等の説明および、修正申告の勧奨(かんしょう)が行われます。
税務署の指摘に納得する場合は、修正申告の勧奨に応じる形で申告書を提出し、本税および加算税・延滞税を納めます。
修正申告の勧奨に応じない場合には、税務署が更正決定を行いますので、税務署の判断に不服があるときは、不服申立ても検討してください。

税務調査は終了するまでに数か月かかる

税務署から調査を実施する旨の連絡があってから調査が完了するまで、数か月かかります。
調査が終了するときは、必ず調査担当者から調査結果の説明が行われますので、完了の連絡が入るまで、調査は継続している状態です。
調査期間中は調査担当者から質問等が行われることもありますが、関与税理士がいる場合には、臨場調査以外で税務署職員と直接対峙することは基本的にありません。
税務調査に慣れている納税者はいませんので、税務署対応に不安がある場合は、調査対策の一環として税理士に依頼することも選択肢です。

税務調査前に申告誤りを把握した場合

税務署は実地調査を行う前に、申告誤りや計算ミス等を把握していることもありますが、調査前に誤りを指摘することはありません。
申告ミスによるペナルティは、修正申告書等を提出するタイミングで異なります。
税務調査で申告誤りの指摘を受け、修正申告書を提出した場合、過少申告加算税として10%が課されますが、自主的に修正申告書を提出した場合には、過少申告加算税は課されません。
また、調査通知以後から調査による更正等予知前までに修正申告書を提出した際の過少申告加算税の税率は5%と、調査後に修正申告するときよりもペナルティは軽減されます。
そのため、調査の連絡を受けた時点ですでに申告誤りを把握しているときは、実地調査が行われる前に修正申告書を提出した方が、余計な税金を支払わずに済みます。

まとめ

臨場調査が行われる日数は1日または2日間ですが、調査の連絡が入ってから終了するまでには数か月かかります。
税務調査は基本的に納税者と調査担当者がやり取りすることになりますが、顧問税理士がいる場合は、税理士を通じて日程調整等を行うことができます。
また、申告書を提出した時点で税理士に依頼していなくても、調査を受けた段階で税理士を付けることは可能です。
税務署と納税者の間に税理士が入れば税務調査の負担を軽減できますので、調査を受けることとなった際は、税理士を活用することも検討してください。

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