特別国税調査官が担当する事案の特徴。調査を受ける際の注意点を解説

『特別国税調査官(通称:トッカン)』は、税務署の中で最も厳しい調査を行う税務調査官です。
こちらの記事では、特別国税調査官が担当する事案の特徴と、調査を受ける際の注意点について解説します。

国税組織の基本情報

国税組織は国税庁を頂点として、11の国税局および沖縄国税事務所があり、国税局(国税事務所)の下に524の税務署が存在します。
国税局は国税庁の指示のもと、税務署の賦課・徴収事務について指導や監督を行っており、国税局の部署が税務調査を実施することもあります。
税務署で調査を担当する部署は、法人課税部門・個人課税部門・資産課税部門の3つで、実施する調査の内容は全国共通です。
税務調査官が担当する事案は役職などによって割り振られ、事業規模が大きい法人(個人)の調査ほど、経験豊富な税務調査官が調査を担当します。

特別国税調査官の役職と特徴

特別国税調査官は税務署の役職の一つであり、税務署の中でも税務調査に特化した部門として位置付けられています。

トッカンは税務署の調査専門職員

特別国税調査官は、税務調査のみを行う税務署職員です。
特別国税徴収官についても「トッカン」と呼称することもありますが、特別国税徴収官は税金を滞納している納税者から税金を回収することを職務とする役職なので、特別国税徴収官が申告内容の誤りを指摘することはありません。
課税部門で税務調査官を管理しているのは、民間企業の課長に相当する統括国税調査官ですが、特別国税調査官は統括国税調査官よりも立場は上です。
また特別国税調査官の中にも優劣があり、「厚紙特官」と呼ばれる特別国税調査官は副署長と同等の地位にあります。

税務調査の知識・経験が豊富な職員が就く役職

特別国税調査官は、長年税務署職員として勤務していた人が就く役職です。
出世して特別国税調査官の役職に就いた職員は税務調査に積極的であり、国税局の査察部や資料調査課の勤務経験がある職員も数多く存在します。
そのため特別国税調査官は、税務調査の知識・経験が豊富であることはもちろんのこと、少しのほころびも見逃さない洞察力も兼ね備えています。

特官部門には実働部隊が在籍する

特別国税調査官の下には、特別国税調査官の指示のもと活動する「特官付」が在籍しています。
特官付は国税調査官や上席国税調査官が配置され、特官部門の調査の実務は特官付が担っています。
特別国税調査官に比べれば特官付の知識・経験は浅いですが、国税局の調査担当部署から配置された職員も多くいますので、一般部門の職員よりも厳しい調査が想定されます。

特別国税調査官が担当する事案の特徴

一般部門の職員は税務調査だけでなく、提出された申告書の内容確認や簡易的な申告誤りの指導などの仕事も兼務しています。
それに対し、特別国税調査官は税務調査に特化した職員であり、税務署によって重要な調査事案を担当します。

トッカンは実地調査しか行わない

税務調査には、「実地調査」・「実地調査以外の調査」・「行政指導」の3種類ありますが、特別国税調査官は基本的に実地調査のみを行い、基本的に実地調査以外の調査や行政指導を行うことはありません。
一般的に知られている税務調査は、実地調査を指します。
実地調査の対象となった場合、調査担当者が1日かけて資料確認や申告状況の聞き取りが行われます。
実地調査以外の調査とは、納税者を税務署に呼び出し申告誤りを指摘する調査方法です。
調査担当者が事務所等を訪れて資料等を調べることはありませんが、納税者が調査に応じない場合には、実施調査に切り替えて調査が実施されることもあるので要注意です。
行政指導は納税者に自主的な申告を促すもので、法律上の税務調査ではありません。
そのため行政指導を受けて申告書を提出した場合、実地調査や実地調査以外の調査で申告したときよりも課されるペナルティは軽いです。

税務署の調査で最も難しい事案を担当する

特別国税調査官が担当する事案は、納税額が多い申告や申告内容の実態解明に時間を要すると見込まれる申告などです。
大企業などの調査は国税局の職員が担当し、税務署の管内で比較的事業規模が大きい法人(個人)については、特別国税調査官が調査担当者となる傾向にあります。
税務調査官には調査件数のノルマがあり、1件当たりの調査で費やせる調査日数が決まっています。
特別国税調査官についても調査日数は定められていますが、難解な事案を担当することから、一般部門の調査担当者よりも1件当たりの事案に費やせる調査日数が多いです。
調査日数が多ければ申告内容の細かい部分も調べますし、複数の反面調査先に赴くことができるため、申告誤り等を指摘される可能性が高くなります。

特別国税調査官の調査方法の特徴

調査対応に不安を覚えるのは、税務調査に関しての知識が少ないからです。
少しでも特別国税調査官が行う調査方法を理解しておけば、不安を取り除いて調査に挑むことができます。

基本的な調査方法は一般職員と同じ

特別国税調査官が実施する税務調査は、他の税務署職員と同じ任意調査です。
(例外はマルサ(査察部)が実施する強制調査。)
任意調査は、税務調査を行う前に担当者から調査を実施する旨の連絡が入るため、調査当日までに対策を練ることができます。
臨場調査は、法人であれば午前中に代表者に会社の経営状態や最近の状況を聞き取りが行われ、午後に申告に関係する書類等を調べます。
当日に調査が終わることはなく、臨場調査で調べた資料の裏付けを取るために反面調査が行われますし、場合によっては再び臨場調査が実施される可能性もあるので要注意です。
特別国税調査官が調査事項をすべて確認しましたら納税者に連絡が入り、調査結果の説明が行われます。
申告内容が正しければ是認通知が交付されますが、申告誤りが指摘された場合には修正申告書の提出および、追徴課税を支払うことになります。
なお任意調査であっても、税務調査を拒んだり証拠となる書類などを隠蔽する恐れがある場合には、無予告で調査が実施されることがあるので気を付けてください。

通常の調査よりも時間をかけて資料等を調べる

特別国税調査官は1件当たりの事案に対して時間をかけて調査することができるため、一般的な調査よりも書類等をしっかりと調べます。
税務署は5年前まで遡って申告書を調べますが、脱税が判明すれば最長7年前まで遡ることが認められています。
調査事項が解明しない限り税務調査を終わらせることはなく、必要であれば特別国税調査官は何度も臨場調査を行いますので、早期に終了させるには対応のしかたも鍵となります。

特別国税調査官が調査担当者となった際の対処法

特別国税調査官が調査担当者になったとしても、申告内容に誤りが無ければ指摘されることはありませんので、税務調査の対策方法は一般部門の職員が調査する場合と同じです。
調査時の虚偽回答は、重加算税の対象となりますので、質問に対しては偽りなく答えてください。
ただし、余計なことを話してしまうと、そこから調査が展開されることがありますので、税務調査を受ける前に税理士からレクチャーを受けることを推奨します。

まとめ

特別国税調査官が調査担当となったとしても、必ず申告誤りが指摘されるとは限りませんし、調査担当者と意見が対立する場合には、納税者としての意見を正確に伝える必要があります。
特別国税調査官は知識と経験が豊富ですので、丸め込まれないためにも税理士の存在が不可欠です。
税理士に相応の調査経験が無いと、特別国税調査官と渡り合うことはできませんので、依頼する際は税務調査に強い事務所を選んでください。

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