隠している預金口座は銀行調査で税務署に筒抜けになっている

税務署は納税者の情報を収集するために、金融機関等に対しても調査を行っています。
申告誤りや不正行為は銀行調査で判明するケースも多く、調査担当者は臨場調査を実施する時点で口座情報を入手していることもあります。
本記事では、税務調査で銀行調査が行われる理由と、銀行口座を把握する手段について解説します。

税務署が銀行調査を実施する理由

銀行調査は税務調査の一環として行われるもので、税目の種類に関係なく実施されます。

お金の大部分は金融機関に預けられている

納税者が保有するお金の大部分は金融機関に預けられているため、税務署はお金の流れを把握するために銀行調査を実施します。
現金商売であれば、事務所などに現金を置いておくこともありますが、全財産を現金でプールすることはありません。
税金を誤魔化すために売上金額を自宅や事務所の金庫に隠している事業者についても、金庫に隠せる金額は限られるため、通常使用している口座とは別に口座を開設し、そこに除外した売上金額をプールすることが多いです。
税務署はそれらの事情を理解しているため、臨場調査で金庫等を調べるだけでなく、銀行調査で入出金の流れや口座の存在を把握しています。

入出金の状況から不正内容を推測できる

インターネット上で完結する取引については、売上や仕入れの対価は銀行口座に振り込まれますので、銀行調査を実施すれば大部分のお金の流れを確認することができます。
売上100に対して90の入金がない場合、調査担当者は残り10の所在を臨場調査で確認することができますし、他の口座や多額の現金の存在について尋ねることができるので不正が把握しやすくなります。
また銀行調査では口座の入出金の履歴を確認することができるため、税務署は銀行調査で売上除外や経費水増しの証拠を入手し、その情報を基に臨場調査を実施するなど、調査対象者の選定の手段として用いられることもあります。

税務署が調べることができる銀行調査の範囲

調査担当者には質問検査権が与えられており、調査のために必要であると認められれば、納税者はもちろんのこと、納税者以外の人に関することも調べることができます。
取引内容の真偽を確かめるために取引先への反面調査を実施することもありますし、金融機関に納税者が保有する情報の照会も行います。
銀行調査は納税者だけでなく、納税者の代理人や使用人、その他関係者に対しても実施することが可能です。
売上の一部を親族名義の銀行口座に隠していたとしても、税務署が親族の口座を調べることで売上除外の事実は簡単に把握されますし、仮装隠蔽行為とみなされれば重加算税の対象になるので注意してください。

税務署が納税者の銀行口座を把握する手段

納税者の銀行口座の存在を知らなければ、調査担当者もその口座を調べることはできません。
そのため税務署は、様々な方法で納税者および関係者が保有している金融機関の情報を入手しています。

申告書に記載されている銀行口座

申告書に添付されている資料に記載されている金融機関は銀行調査で調べられますし、融資元や取引先に関係する金融機関も調査対象です。
また、過去1度でも税金の振替納税で引き落とし先として指定した口座や、還付金の振込先口座についても銀行調査の対象となります。

通帳の摘要欄

銀行調査では入出金の情報はもちろんのこと、摘要欄に記載されている情報から他の金融機関の存在を確認することができます。
金融機関は、法律で口座内の取引履歴を10年間保存することが定められているため、保存期間以内の口座内の動きは、税務署にチェックされる可能性があります。
金額の大きい入出金があった場合には、調査担当者は伝票を調べて振込先を特定することもありますし、臨場調査の際に入出金に関して聞かれることもあるので注意してください。

税務署に蓄積された資料・情報

税務署には過去に実施した調査や申告書の内容が情報として蓄積されており、調査対象者以外の場所から銀行口座の存在が把握されることもあります。
たとえば、他の納税者の税務調査を実施したときに取引先として存在を認知され、振込先として利用した口座が税務署の資料として税務署に蓄積されています。

臨場調査でも銀行の通帳を調べる理由

銀行調査を実施すれば、税務署は納税者の口座の存在や入出金の状況を確認することができます。
しかし、調査担当者が銀行口座の存在を事前に把握していたとしても、臨場調査では存在を知らないように振る舞いますので気を付けてください。

通帳等の管理状況の確認

臨場調査で調査担当者が銀行の通帳を確認するのは、通帳の中身だけでなく、管理状況も確認したいからです。
調査担当者は通帳の提示を促した場合、納税者に保管場所を尋ね、通帳ごとに保管場所が異なる場合には、保管場所を分けている理由について聴取されます。
用途によって銀行口座を使い分けることに問題はありませんが、日常的に使用している通帳であれば厳重な場所に保管しておくことは少ないため、特定の通帳だけ違う場所から持ち出したときは、事業以外の用途で使用していることも疑ってきます。

仮装隠蔽する意図の確認

臨場調査では、売上除外や経費の水増しを行った当事者を確認するために聞き取りを行い、通帳などの管理状況から当事者を特定し、意図的な税金逃れの有無を確認します。
税務調査で申告誤りを指摘された場合、本税以外に加算税と延滞税を納めることになりますが、意図的に税金逃れを行った際は重加算税の課税対象です。
財産を隠したり証拠を隠蔽するなどの行為が意図的な税金逃れに該当し、調査担当者は税務調査でそれらの事実の有無についても調べています。
意図的な売上除外が判明した場合には重加算税の対象となりますが、従業員が勝手に売上を除外していた場合など、重加算税が課されないケースもあります。
ただし、脱税の行為者が納税者自身でなくても、仮装隠蔽が納税者本人の行為と同視できる場合には、重加算税の賦課要件を満たすものとみなされるので注意してください。

銀行調査への対策方法

銀行調査は税務署が銀行に対して実施するものであり、納税者が銀行調査の対策を講じることはできません。
しかし、銀行口座を調べられたとしても不正行為が行われていなければ問題は起きませんし、税務署が銀行調査で不正が行われていないと判断すれば、税務調査が早期に終了することもあります。
事業者であれば複数の銀行を使い分けることは珍しくなく、メインバンクとサブバンクで通帳の保管場所が違っていること自体が疑われることはありません。
ただ通帳の現物確認の際に、各通帳の保管場所を分けていることについて尋ねられる可能性は高いため、回答できるように想定問答を用意しておくことが望ましいです。
なお、税務署は貸金庫の有無についても把握していますので、貸金庫に通帳等を入れたとしても隠し通すことはできません。

まとめ

税務署に与えられている質問検査権は強力であり、金融機関が保存している入出金の情報等は確認できるため、銀行に関係することはすべて知られている前提で調査対策を講じた方がいいでしょう。
銀行調査は親族の口座にも及びますので、除外した売上を家族名の口座に移していたとしてもバレてしまいます。
安易に売上除外や経費の水増しはリスクが高いので、法律の範囲内で認められた手段で節税を行ってください。

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