青色申告の税制優遇制度の概要と税務調査で承認が取消しになるケース

事業者は確定申告を行う際、青色申告と白色申告のいずれかの方法で手続きすることになります。
青色申告を選択すれば、税制上の優遇措置を受けられる反面、税務調査で申告誤りの指摘を受けた場合、青色申告が取消しになる可能性があるので要注意です。
本記事では青色申告の特典と、青色申告者が税務調査を受けるリスクについて解説します。

青色申告をすることで受けられる特典

青色申告は、個人事業主と法人のどちらも申請することができる制度です。

個人事業主が享受できる青色申告のメリット

個人事業主が青色申告を行うことで受けられる主な特典は、次の3種類です。

<青色申告の主な特典>

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 純損失の繰越しと繰戻し

「青色申告特別控除」は、不動産所得または事業所得から発生した利益から最大65万円控除することができる制度です。
正規簿記による記帳を行い、貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付することが求められます。
65万円の青色申告特別控除を受けるためには、還付申告書等を提出する方であっても期限内申告をしなければならず、要件を満たしてないと控除額は最高10万円となるので注意が必要です。
「青色事業専従者給与」は、青色申告者と生計を一にしている配偶者や、その他の親族に支払う給与を必要経費に算入することができる制度です。
事前に届出書を提出するだけでなく、親族が専ら事業に従事している等の要件はありますが、家族が従業員として働いている場合には節税手段として活用できます。
青色申告を行っている個人事業主は、事業の赤字が発生した場合、損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年分の所得金額から控除することができます。
前年も青色申告を行っている事業者については、純損失の繰越しに代えて、その損失額を生じた年の前年に繰り戻し、前年分の所得税の還付を受けることも可能です。

法人が享受できる青色申告のメリット

法人が青色申告を行うことで受けられる主な特典は、次の2種類です。

<青色申告の特典>

  • 欠損金の10年間繰越
  • 欠損金の繰戻還付

法人が青色申告を行う最大のメリットは、欠損金(赤字)を最大10年間繰り越すことができる点です。
欠損金の繰越年数が個人事業主よりも長いため、黒字化するまでに時間を要する事業を営む場合、欠損金の繰越制度の恩恵を最大限享受できます。
欠損金の繰戻還付は、前年が黒字で本年が赤字だった場合、損益を相殺して前年分の税金の還付を受けることができる制度です。
前年も青色申告を行っていることや、期限内に手続きする等の要件はありますが、前年に納めた税金を返してもらうことができます。

青色申告を適用している事業者が税務調査を受けるリスク

税務調査は、青色申告と白色申告のどちらであっても対象となる可能性があります。
調査対象者は税務署が申告内容を確認した上で選定しますので、申告書の色(青色申告・白色申告)によって調査を受ける確率が大幅に変わることは考えにくいです。
ただ青色申告には正規簿記による記帳などが義務付けられており、白色申告者よりも申告誤りは少ないことから、調査を受ける確率は相対的に低いとされています。
一方で、青色申告者が税務調査を受け、申告誤りの指摘を受けた場合、青色申告の承認が取り消しになる可能性があります。
青色申告の承認が取り消されれば、青色申告の特典は利用できなくなりますし、取消し以後一定期間は、青色申告の承認申請書を提出することができません。
申告誤りを指摘されたことだけを理由に、青色申告の承認が取り消しになることはありませんが、取消しされるリスクへの対処は必要です。

税務調査で青色申告の承認が取消しになるケース

青色申告は承認制となっているため、税務調査で指摘を受けた場合など、青色申告の承認が取消しになることがあります。

帳簿書類を提出していない

青色申告の特典を受ける場合、帳簿書類の備付けや保存等を求められますが、税務職員に提示を求められた際は応じなければなりません。
税務調査で調査担当者が帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、納税者が正当な理由なく提示を拒否した場合、青色申告の承認の取消事由に該当し、青色申告が取り消されます。
なお、青色申告の承認取消対象となるのは、提示がされなかった年分のうち、最も古い年分以後の年分からです。

税務署長の指示に従わない

税務署長は、青色申告を適用している納税者に対して、帳簿書類の備付けや保存等に関して指示をすることが認められています。
納税者が税務署長(調査担当者)からの指示に従わない場合、指示に係る年分以後の年分の青色申告の承認が取消しとなります。

仮装・隠蔽が行われていた

税務調査において、申告内容に関する仮装隠蔽が行われていた場合、青色申告の承認取消対象となります。
実際に取消しを受けることになるのは、仮装隠蔽の事実に基づく所得金額が更正等に係る所得金額の50%に相当する金額を超え、かつ不正事実に係る所得金額が500万円以上となる場合です。
純損失の金額に関する不正を行っていた場合についても、不正事実に係る純損失の金額が当初の申告に係る純損失の金額の50%に相当する金額を超える場合、取消対象となるので注意してください。
(不正事実に係る純損失の金額が500万円に満たない場合を除きます。)

帳簿書類の記載等が不十分

税務署は申告誤り等を指摘する場合、収入や支出を推計して利益(損失)の額を算出することが認められています。
帳簿書類への記載等が不十分である等を理由に、推計による利益等の額を算出することになったときは、青色申告の取消対象となるので注意してください。

相当の事情がある場合の個別的な取扱い

先に挙げたケース以外にも、青色申告制度の趣旨から真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められる場合には、青色申告の承認は取消しになります。
たとえば、二重帳簿を作成により本来の帳簿に記載がしていない取引がある場合や、承認取消しに係る形式基準を回避するための意図的な過少申告を継続するケースなどは、青色申告の承認を取消しすることが相当と認められるものに該当します。

無申告または期限後申告による青色申告の承認の取消し

法人税の青色申告は、2事業年度連続して期限内申告が行われていない場合、当該2事業年度目の事業年度以後の事業年度については、青色申告の承認が取り消されます。

青色申告の取消しから再申請できるまでの期間

青色申告が取り消しになった場合、取り消しされてから1年を経過しなければ再申請することはできません。
青色申告の適用は、申請した翌年(翌事業年度)からとなりますので、青色申告が再び承認されたとしても、青色申告で手続きできるようになるのは翌々年(翌々期)からです。
青色申告ができない期間は白色申告で手続きすることになりますが、その間に赤字が発生したとしても損失額を繰り越すことはできませんので、税務調査を受けることになったとしても、青色申告の承認を取り消されないための対策を講じる必要があります。

まとめ

青色申告を適用するためには、承認申請の手続きや帳簿書類の管理等が必要になりますが、その対価として相応の恩恵を享受できます。
継続して事業を営むのであれば、基本的には青色申告により申告手続きを行うことが望ましく、税務調査で青色申告の承認を取消しされないためにも、取消要件に該当するような状況は回避しなければなりません。
青色申告が取り消しになった場合、将来の税務調査にも影響を及ぼしますので、税金対策は法律で認められた範囲の手段を用いてください。

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