税務署が実施する税務調査の種類と特徴および対処法を解説

税務調査にはいくつもの種類が存在し、実施する目的によって使い分けられています。
今回は税務署が行う税務調査の種類とそれぞれの特徴、そして税務調査を回避するためのポイントについて解説します。

税務調査の種類

税務調査は、「任意調査」と「強制調査」の2つに区分されますが、税務署が実施する調査は基本的に任意調査のみです。
任意調査は、納税者の同意を得て行われる調査方法で、「実地調査」・「実地調査以外の調査」・「行政指導」の3種類あります。
一方、強制調査は『マルサ』こと国税局査察部が担当者として実施する調査をいい、納税者の同意を得ずに自宅や事務所等を調べることが可能です。
強制調査の対象となるのは悪質かつ高額の脱税を行っている人(法人)に限られますので、大部分の納税者は強制調査を受けることはありません。

実地調査は税務署が自宅等に訪れて実施する調査

一般的に税務調査として認識されている調査は、「実地調査」のことを指します。

予告調査で行うのが原則

実地調査は「臨場調査」ともいい、調査担当者が自宅や事務所を訪れ、申告書を作成する際に用いた資料等を細かくチェックする調査方法です。
税務調査は調査担当者が突然自宅等を訪れて、調査を開始するイメージが強いですが、実地調査は原則として事前に調査を行う旨の連絡があります。
事前連絡の際、調査担当者から対象税目および対象年分が伝えられ、調査日時を決定します。
税務署は平日しか活動しませんので、休日を調査日に指定することはできませんが、事業内容等の事情を考慮し、ある程度の調査日時の調整は可能です。

臨場調査は1日中行われる

臨場調査では、最初に調査担当者から事業内容等の聞き取りが行われ、申告書を作成する基となった資料を調べます。
調査担当者からは色々な書類の提示を求められますので、あらかじめ対象税目・年分に関連する資料は提示できるよう、準備しておいた方がいいでしょう。
資料等を一通り確認後、申告内容や資料についての質疑応答が行われ、大きな問題点が無ければ調査担当者は「反面調査」に移行します。
反面調査は取引先や銀行に対して聞き取り等を行う調査で、臨場調査で確認した資料や回答の整合性を確かめるために実施します。
反面調査により申告誤りや再度聞き取りが必要になったときは、税務署への呼び出しや再度臨場調査が行われる可能性もあるため、調査担当者と対峙するのは1度のみとは限りません。
実地調査が終了するときは、調査担当者から納税者に対して調査結果の説明が行われ、申告内容に適正だったと判断されれば是認通知が交付されます。
反対に、調査結果の説明で申告誤りが指摘された場合には、修正申告書(期限後申告書)を提出し、本税に加えて附帯税(加算税・延滞税)を納めることになります。

調査に応じない場合は無予告調査が実施される

実地調査は事前に予告してから行うのが原則ですが、調査を実施する旨を伝えることで調査対象者が逃亡等の恐れがある場合には、無予告での調査に切り替えて実施します。
一般的な実地調査であれば午前10時からスタートすることが多いですが、無予告調査の場合、出勤する前の早朝の時間帯に調査担当者が自宅に訪れ、調査を開始することもあります。
また実地調査の日程調整等に応じない場合についても、無予告調査が行われる可能性がありますので、税務署から連絡があった際は無視せず応対してください。

悪質な場合には重加算税の対象

加算税には種類があり、期限後申告を提出した際は無申告加算税、修正申告を提出した際には過少申告加算税が課されます。
しかし脱税行為を行った場合には、無申告加算税や過少申告加算税の代わりに重加算税の対象となり、最大で本税の40%を加算税として納めなければなりません。
延滞税は、納付が遅れたことに対するペナルティで、納付期限の翌日から完納する日までの日数に応じて延滞税の額が算出されます。
期限内に申告書を提出し納税が完了している場合、1年で延滞税の計算がストップするため、申告期限から1年以上経過した後に調査を受けたとしても、納める延滞税の額は1年分のみです。
しかし重加算税の対象となるようなケースは、延滞税の計算が中断する規定は適用されませんので、延滞税も加算税と同様、脱税を行った納税者に対するペナルティは厳しいです。

実地以外の調査は調査項目だけを調べる調査

実地調査以外の調査は、調査担当者が納税者を税務署に呼び出し、申告誤りを指摘する方法です。

課されるペナルティは実地調査と同じ

実地調査は申告書を作成した書類等を調べるのに対し、実地以外の調査は申告内容の誤りのみを指摘する際に行われる調査です。
実地調査以外の調査でも資料等の提示を求められることもありますが、調査担当者が自宅等を訪れて調査することはありません。
ただし、実地調査以外の調査により修正申告書等を提出した際は、実地調査と同様、本税に加えて加算税・延滞税を納めることになります。

調査に応じないと実地調査に移行する可能性がある

実地調査以外の調査は、申告誤りをピンポイントで指摘する際に実施されますが、税務署からの連絡や来署依頼に応じない場合、実地調査に切り替えて調査を行う可能性があります。
実地調査に切り替えた場合、調査担当者が臨場して申告書の関連書類を一通り確認することになりますので、調査による拘束時間が長くなります。

行政指導は自主的な申告を促す調査

行政指導は、税務署が自主的な申告または修正申告を促す際に実施されます。

行政指導は法律上の税務調査ではない

行政指導は法律上の税務調査ではありませんので、行政指導により提出した申告は自主申告扱いです。
期限後申告や修正申告を行った際に課されるペナルティは、税務調査によるものか否かで適用される税率が異なります。
自主期限後申告の場合、無申告加算税は5%、自主修正申告であれば加算税は原則ゼロです。
行政指導で申告書を提出したときは、実地調査や実地調査以外の調査よりもペナルティが軽いので、申告誤りが判明した際は調査を受ける前に修正申告書等を提出するのが望ましいです。

指導に応じないと税務調査に移行する

行政指導は納税者に申告内容の確認と、誤りがあった場合には自主的な修正を求める制度ですので、申告内容に誤りが無ければ修正申告書等を提出する必要はありません。
しかし修正申告書等を提出しなかった場合において、税務署が申告内容に誤りがあると判断した場合には、法律上の税務調査(実地調査または実地調査以外の調査)に切り替え、調査が行われる可能性があります。
たとえば個人の申告で多いのが、突発的な収入や資産を売却した際に発生する譲渡所得や副業収入の申告漏れです。
税務署は不動産を売却した等の情報は事前に把握していますので、税務署からお尋ね文書が送られてきた場合には、事実関係および申告の必要性を今一度ご確認ください。

税務調査を回避するためにやるべきこと

税務署から税務調査を実施する旨の連絡があった時点で、調査を拒むことはできないため、税務調査を回避するためには、税務署から連絡が来ない状況を整えることが重要です。
税務調査は申告誤りの疑いがある場合に行われますので、正しい内容の申告書を作成し提出するのはもちろんのこと、添付書類も不備・不足なく提出することが大切です。
また税理士が申告に関与している場合、同じ申告内容でも調査を受けにくくなります。
申告書の作成代理だけでなく、調査対策として税理士へ依頼するのも選択肢の一つです。

まとめ

適正な申告書を提出していれば調査を実施する必要性もありませんので、調査を受ける可能性は大きく下がります。
納税者が調査の種類を選ぶことはできませんが、税務署は調査を実施する際は基本的に連絡や文書による通知を行いますので、調査担当者が予告なしに自宅等へ訪れるようなことは基本的に原則ありません。
ただし、税務署からの文書に回答しない場合や調査の日程調整に応じないときは、無予告による調査が行われる可能性もありますので、万が一税務署から連絡があった場合は必ず応対してください。

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