飲食店の売上除外等は税務調査でどのように把握・指摘されるのか

飲食関係の業種は、税務調査で不正を指摘される割合が高く、税務署は様々な方法で売上除外の事実を把握しています。
申告誤りが指摘されれば追徴課税の対象になることはもちろんのこと、脱税行為は重加算税が課されますので要注意です。
本記事では飲食店の売上除外等が見つかる理由と、税務署が税務調査で確認するポイントについて解説します。

飲食店は現金商売なので調査対象になりやすい

飲食店が税務調査で指摘されやすいのは、現金商売である点が大きいです。
日本でもキャッシュレス決済は普及しており、クレジットカードやスマホ決済など、現金以外で代金を支払うケースも多くなっていますが、飲食店については現金決済のみのお店も多数存在します。
飲食店にキャシュレス決済が普及しないのは、原材料費の高騰を販売価格に反映させることが難しく、クレジットカード等の決済手数料が経営の負担になることなどが要因とされています。
現金商売を行うこと自体に問題はなく、それだけを理由に調査対象になることはありません。
しかし、現金決済はデジタル決済と比べ売上の一部を除外することが容易であり、レジスターを使用しないなど、売上を正確に算出しようとしていない事業者がいるのも事実です。
税務署は、適正に申告していないことが想定される納税者を対象に税務調査を実施しますので、適正申告をしていない可能性が高い飲食店は調査対象になりやすいです。

飲食店に対する税務調査で確認する事項

飲食店に対する税務調査では、次の事項は必ず調べられます。

売上の管理方法・状況

売上除外は飲食店が用いることの多い脱税手段で、税務調査では売上金はもちろんのこと、売上の管理方法や管理の状況をチェックします。
たとえばお客さん10人に対して料理を提供した場合、9人分の売上しか帳簿に記載しなければ、1人分の売上を除外することが可能です。
レジスターで売上管理しているお店であれば、レシートの控えを調べることで売上が途切れている時間帯の有無など、不自然な動きが無いか確認できます。
一方、レジスターを使用していない飲食店は、売上の管理がずさんになる可能性が高く、税務調査で売上の集計方法は必ず聞かれます。
売上の計算方法が信ぴょう性に乏しければ、申告漏れがあったと判断されることもありますので、調査を受ける際は売上の集計方法を説明できるよう準備してください。

売上と帳簿の整合性

脱税する意思が無かったとしても、売上の一部が帳簿に記載されていなければ正しく申告書を作成することはできないため、調査担当者は帳簿書類の管理状況も確認します。
デジタル化が進んでいる最近では、自動記帳する会計ソフト等も登場していますが、ツールを導入していない事業者は手動で帳簿を作成することになりますので、調査では適正に帳簿作成が行われているかチェックされます。
また、税務署は臨場調査だけでなく、後述する内観調査や外観調査の方法でも、売上や経費に関する情報を集めています。
臨場調査での虚偽答弁は、重加算税が課される要因となりますので、調査の有無に関係なく売上と帳簿の整合性は取れるようにしてください。

仕入および在庫の状況

飲食業は毎日のように仕入れを行い、在庫を管理しなければならない業種です。
仕入量が多ければ帳簿への記載漏れが発生する確率は高くなりますし、経費として計上する時期を間違えると、その年の利益の額が変わってしまいます。
取引量が多い業種は意図的に仕入量を増やすなど、架空経費を計上することも容易になります。
そのため税務調査では不正目的で経費の水増しが行われていないか確認するために、仕入状況だけでなく在庫の管理方法も入念に調べます。

人件費の経費計上の適否

飲食店はアルバイトやパートを雇うことが多く、人件費が問題になることもあります。
アルバイト等を雇っている場合、勤務状況を調べるだけでなく、勤務状況に応じた給与を支払っているかもチェックします。
飲食店の中には架空の人物が存在するかのように装い、人件費を増やそうとする事業者もいますので、税務調査を受けることとなった場合、シフト表などを提示できるように準備してください。

交際費

飲食業は他の業種に比べて交際費が少ないかもしれませんが、交際費は金額の大小に関係なくチェックされる項目です。
交際費が計上されていれば用途や相手先を聞かれますので、回答できるよう領収書などは破棄せず保存してください。

税務署が飲食店の売上除外を把握する3つ方法

税務署は臨場調査以外の方法でも、飲食店の売上除外の事実を掴もうとしています。

内観調査

内観調査は内偵調査とも呼ばれる手法で、調査担当者が客として飲食店を利用し、店の繁盛具合や仕入単価を調べます。
レジスターが使用されていなければ、売上を計算する方法を確認しますし、1時間当たりの来店客数や1人当たりの売上単価を集計しています。
内観調査を何日も実施するわけではないため、内観調査で確認した客単および客数から算出された数字と、申告書の売上が相違していたとしても問題にはなりません。
しかし、申告書の売上が明らかに過少だった場合、売上の一部が除外していることが疑われますので注意してください。

外観調査

外観調査とは、店舗の立地条件等から売上等を推測する方法です。
立地条件が良好な場所は集客が見込める一方で、賃料も高くなることから、ある程度の客の回転率が求められます。
外観調査で予想される客数を計算し、内観調査で確認した客単価と合わせることで、精度の高い売上金額の推計値を算出します。
回転率の低い飲食店は客単価が高くないと経営が難しくなりますので、立地条件的に売上が少ない飲食店についても税務調査を受けることがあります。

臨場調査

臨場調査では、内観調査や外観調査で集めた情報を基に売上の管理方法や売上状況を調べます。
伝票で集計している場合には、集客数と売上票の数の違いが指摘されることもありますし、レジスターを利用しているお店であれば、レシートの控えから情報を集めることもあります。
税務調査は申告誤りを指摘するだけでなく、意図的な税金逃れを行う意思についても確認しています。
ケアレスミスなどにより、申告誤りを指摘されたときは過少申告加算税が課されますが、意図的な税金逃れは重加算税の対象です。
過少申告加算税の代わりに課される重加算税の税率は35%と高く、青色申告の承認が取り消されるなどのリスクもありますので気を付けてください。

飲食店がやるべき調査対策

基本的な税務調査対策はどの業種であっても同じですが、飲食業は他の業種よりも調査を受けやすいことから、入念な調査対策が求められます。

調査を受ける前提で対策を講じること

税務調査は受けないことが最善ですが、適正な申告書を作成していたとしても、調査対象となってしまうことはあります。
調査を受けることになったとしても、申告誤りの指摘を受けなければ追徴課税を支払うことにはなりませんが、指摘されないためには申告内容だけでなく、売上や経費の管理方法も大切です。
売上・経費管理をシステム化すれば、売上の計上漏れの可能性が減りますし、帳簿管理ミスも無くなりますので、管理方法を見直すのも調査対策の一つです。

税理士選びの重要性は高い

税理士は税の専門家ですので、依頼すれば納税者よりも正確に申告書を作成することができます。
ただ注意しなければいけないのは、税理士にも得意不得意があり、法人を専門とする税理士や、相続税など一部の税目に特化した税理士事務所が存在する点です。
最適な節税方法は業種によって違いますし、税務調査で重点的にチェックされる項目も異なるため、税理士を選ぶ際は業界に精通していることも重要な要素となります。

まとめ

飲食業は、業界全体で税務調査を受けやすい傾向にあることから、他の業種よりも自己防衛の重要度は高いです。
申告誤りを指摘されれば本税だけでなく、加算税・延滞税を納めることになりますので、売上の計上漏れが発生しないよう、日頃から帳簿を記載し、適正な申告書の作成に努めてください。

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