税務調査前に修正申告書等を提出した場合のペナルティの取り扱い

税務調査で申告誤りを指摘された場合、本税以外にペナルティとして加算税・延滞税を支払うことになりますが、修正申告書等を提出するタイミングによってはペナルティが軽減・免除されます。
本記事では、税務調査前に修正申告書等を提出した場合における、ペナルティの取り扱いについて解説します。

過少申告加算税の申告時期に応じて適用される税率

過少申告加算税は期限内に申告書を提出した後、修正申告書を提出した場合に課される税金ですが、税務調査で指摘される前に修正申告を行うことで、過少申告加算税が減額・免除されます。

税務調査で指摘を受けた後に申告した場合

税務調査で申告誤りの指摘を受け、修正申告書等を提出した場合には、過少申告加算税として10%の税率が課されます。
期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分に対しては、5%が加重分として上乗せされます。
税務調査で申告誤りを指摘される前に修正申告書を提出したとしても、申告が更正等を予知してされたものである場合、調査通知の有無などにかかわらず10%(加重分の対象部分は15%)の過少申告加算税が課されるので注意が必要です。

法定申告期限等の翌日から調査通知前までに申告した場合

修正申告書を法定申告期限等の翌日から調査通知前まで提出した場合、過少申告加算税は課されません。
「調査通知」とは、税務署が納税者に対して調査を実施することを伝えるもので、調査通知では以下の3項目が通知されます。
実地調査を行う旨
調査の対象となる税目
調査の対象となる期間

税務署から調査通知が行われる前に修正申告を行った場合でも、更正等予知した後に修正申告等を行ったときは、「法定申告期限等の翌日から調査通知前までに申告」には該当しないため、過少申告加算税の課税対象となります。
「更正等予知前」は税務署から処分されることを知らなかった状態をいい、自主的に修正申告を行うことが過少申告加算税を回避するための必須条件です。

調査通知以後から調査による更正等予知前までに申告した場合

調査通知以後から調査による更正等予知前までの間に修正申告書を提出した場合、申告により納付することになった税額に、5%を乗じた額を過少申告加算税として支払うことになります。
税務調査は申告誤りを指摘する目的で実施されますが、調査時点では申告誤りがあるかは判断できません。
そのため税務署から申告誤り等の指摘を受ける前に修正申告書を提出した場合には、「調査通知以後から調査による更正等予知前まで」の間に申告したものとして、過少申告加算税の税率が軽減されます。
なお、調査通知以後から調査による更正等予知前までの間に行った修正申告に対しても加重分の適用があるため、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分に対しては10%の税率が適用されます。

無申告加算税の申告時期に応じて適用される税率

無申告加算税は申告書を提出していない場合や、期限後申告の後に修正申告書を提出した際に課される税金です。

税務調査で指摘を受けた後に申告した場合

税務調査で申告誤りの指摘を受け、修正申告書等を提出した場合には、過少申告加算税として15%の税率が課されます。
50万円を超える部分に対しての税率は20%で、更正等を予知してされたものである場合には、調査通知の有無にかかわらず本税率が適用されます。

法定申告期限等の翌日から調査通知前までに申告した場合

期限申告書を法定申告期限等の翌日から調査通知前まで提出した場合、無申告加算税の税率は5%に軽減されます。
過少申告加算税については、調査通知前に自主的に申告書を提出すれば加算税は課されませんが、無申告加算税は自主的な申告でも課税対象となるので注意してください。
また、更正等予知した後に期限後等を行ったときは、「法定申告期限等の翌日から調査通知前までに申告」には該当せず、通常の無申告加算税の税率が適用されます。

調査通知以後から調査による更正等予知前までに申告した場合

調査通知以後から、調査による更正等予知前までに期限後申告書を提出した場合における無申告加算税の税率は10%です。
50万円を超える部分に対しては、加重分として5%が上乗せされた15%が課され、自主期限後申告と同様、提出が調査による更正等を予知していた場合は通常の無申告加算税の対象となります。

高額無申告に対する無申告加算税の税率引き上げ

令和5年度税制改正で、無申告加算税の対象となる納税額が300万円を超える部分については、適用税率が引き上げられます。

<現行と改正後の無申告加算税の税率>

納税額 現行 改正後
50万円以下 15% 15%
50万円超~
300万円以下
20% 20%
300万円超 20% 30%

※令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用

無申告加算税は納税義務を怠ったことに対する罰則であるため、過少申告加算税よりも税率が高いですが、申告義務を認識していなかったとは言い難い規模の高額無申告に対しての罰則は今後より重くなります。
なお、納税者の責めに帰すべき事由がないと認められる事実に基づく税額については、300万円超の税率適用の対象から除外されます。

重加算税が課されるケースとは

重加算税は過少申告加算税・無申告加算税の代わりに課される税金で、仮装隠蔽行為が行われた場合に対象となる加算税です。
過少申告加算税の代わりに課される重加算税の税率は35%、無申告加算税の代わりの重加算税の税率は40%と、ペナルティが非常に重いです。
過少申告加算税等の代わりに重加算税が課されるかは、税務調査で調査担当者が仮装隠蔽行為を把握した場合に限られます。
したがって、自主的な修正申告書等を提出した場合や、税務調査を受ける前に申告書を提出した際に重加算税が課されることはありません。

延滞税の割合は税務調査の有無で変動しない

延滞税は、期限までに納付を行わなかったことに対する罰則ですので、税務調査の有無で延滞税の割合(利率)が変わることはありません。

<延滞税の計算式>
納付すべき本税の額×延滞税の割合×納付が遅れた日数=延滞税の額

延滞税の割合は、納期限までの期間および納期限の翌日から2月を経過する日までの期間と、納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後で異なります。
納付が遅れると延滞税の割合も高くなるため、早期に納付した方がペナルティを軽減できます。
また、法定申告期限または期限後申告書の提出があった日の翌日から1年を経過する日の翌日から、修正申告書が提出された日の期間については、延滞税の計算期間から控除されます。
そのため申告期限から数年後に修正申告書の提出・納付を行った場合でも、延滞税の計算の対象となる期間は1年です。
ただし、重加算税が課されるようなケースにおいては、控除期間の適用は認められないため、申告期限から納付が完了するまでの日数に応じた延滞税を支払うことになります。

<延滞税の割合>

対象期間 原則 特例(※)
納期限の翌日から2か月以内 7.3% 2.4%
納期限の翌日から2か月経過した日以後 14.6% 8.7%

※令和4年1月1日から令和5年12月31日までの期間

まとめ

税務調査を受ける前に修正申告書を提出すれば過少申告加算税は課されませんし、調査通知を受けた後に提出した場合でも加算税の税率は軽減されます。
延滞税も納付が早いほどペナルティを抑えることができますので、申告誤りに気が付きましたら、税務調査の有無に関係なく早めに対処してください。

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