個人でも無申告者は税務調査の対象になりやすいので要注意

税務調査は個人・法人関係なく行いますし、申告書を提出していない納税者に対しても実施されます。
申告誤り等を指摘された場合、期限内に申告書を提出しているケースとそれ以外では、課されるペナルティが異なるので要注意です。
本記事では、個人に対する税務調査の状況と、税務署が無申告を把握する方法について解説します。

勘違いされている税務調査の実態

税務調査に関する情報は世間に溢れていますが、拡散されている情報が必ずしも正しいとは限りません。

規模が小さい事業者に対しても調査は実施される

所得税の税務調査は、簡易な接触も含めて令和3事務年度に約60万件実施されています。
個人と法人を比べた場合、事業規模は法人の方が大きいため、税務調査のメインは法人税調査です。
ただ、所得税(個人)と法人税(法人)を担当している部署は違いますので、税務署が法人税の調査に力を注いだとしても、個人に対する調査が少なくなることはありません。

「申告していなければ税務署にバレない」は嘘

税務署は提出された申告書の内容を確認し、申告内容が誤っている場合や疑義があるときに税務調査を実施します。
無申告であれば税務署は事業等の実態を把握できず、調査対象にならないと勘違いしている方もいます。
しかし、税務署は申告書以外からも情報を集めており、法定調書や他の納税者を調査した際に無申告に関する情報を入手していますので、申告書を提出していないことを理由に調査は回避できません。

世間で広まっている調査対策は間違っていることが多い

色々な調査対策のしかたがSNS等で拡散されていますが、実際に効果があるかは不透明です。
たとえば今まで税務調査を受けていないと納税者であっても、翌日に調査を受ける可能性はありますし、所得が発生している以上、税務調査を受ける確率がゼロになることはありません。
誤った調査対策は脱税に該当することも考えられ、脱税が摘発されれば罰則を受けるだけでなく、逮捕されるリスクもあります。
そのため調査対策を講じる場合には、一般の人からの情報ではなく、専門家の情報を基に実施してください。

税務署が個人の無申告者を積極的に摘発する3つの理由

税務署は次の3つの理由から、無申告者に対する調査を積極的に実施し、摘発を行っています。

納税者の課税の公平を保つため

税務署が無申告者に対して税務調査を実施する最大の理由は、課税の公平を保つためです。
国税は申告納税制度を採用しており、納税者が自主的に申告書を提出し、納税する仕組みとなっています。
大部分の納税者は適正に申告手続きを行っている反面、意図的に申告を行わないで税金逃れを図ろうとする納税者も一定数存在します。
無申告者を放置すれば、適正に申告する人との間で税負担に不平等が発生し、申告納税制度の根幹を揺るがしかねません。
国税当局はそのような事態を避けるために、調査の重点項目の一つとして無申告者の摘発を積極的に行っています。

誤りが明確なので指摘しやすい

調査担当者は調査を実施したことによる成果が求められるため、増差税額が発生する確率の高い無申告は調査対象になりやすいです。
所得税は所得(利益)に対して課される税金ですので、所得が発生しているのにもかかわらず申告していない納税者を調査すれば、かなりの確率で増差税額が発生します。
また、個人は法人に比べて申告が必要であることを認識していない納税者も多いため、申告の必要性を認識させるために無申告調査が行われることもあります。

無申告事案は増差税額が大きい

国税庁が公表している「令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、所得税の実地調査における1件当たりの申告漏れ所得金額は1,337万円ですが、無申告に対する調査では2倍超の2,923万円の申告漏れ所得金額が発生しています。
申告書を提出している人が申告誤りを指摘された場合、指摘された部分に対応する額が増差税額となるため、意図的に売上除外や経費の水増しをしていない限り、大きな増差税額は見込めません。
それに対し無申告事案は、調査した内容がそのまま増差税額に反映されますので、申告している人を調査するよりも増差税額を見込めることから、成果目的で無申告調査が行われることもあります。

無申告に対して税務調査が実施された場合の影響

通常の調査と無申告に対する調査の流れは基本的に同じですが、調査内容と調査を受けたことによる影響には違いがあります。

無申告事案の調査対象年分は通常よりも広い

国税当局が税務調査を実施できる期間は法律で定められており、原則は5年、悪質な納税者の場合には7年が調査期間です。
一般の税務調査では、法律上で認められた範囲すべてを調査対象とすることは少なく、事業者については3年分の申告が調査対象になることが多いです。
一方、無申告者は申告義務を果たしていないため、法律上の調査可能期間すべてを調査対象とすることが多く、一般的な調査よりも対象範囲は広いです。
また調査対象が広範囲になれば調べる量も増えることから、税務調査の拘束時間は長くなります。

無申告に対する加算税・延滞税のペナルティは重い

税務調査で無申告を指摘された場合、本税と併せて加算税と延滞税を納めなければなりません。
加算税は申告しなかったことに対するペナルティで、無申告者に対しては「無申告加算税」として15%の税率が課されます。
通常の加算税(過少申告加算税)の税率は10%ですので、無申告加算税の方が5%と高く、本税額が50万円を超えると適用税率は20%に上昇します。
また令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する申告においては、300万円を超える部分に対しての適用税率が30%になるなど、今後は罰則がより重くなるので注意してください。
延滞税は、納付が遅れたことに対するペナルティです。
無申告者は納期限までに税金を支払っていませんので、期限後申告書を提出するまでの日数に対応する延滞税を支払うことになります。
申告期限が3年前の年分の税務調査を受けた場合、3年分の延滞税を支払うことになりますので、無申告に気が付いた時点で申告書は提出および納付した方がいいでしょう。

調査終了後も税務署からマークされる

税務調査で申告誤りの指摘を受けなければ、無申告者は納税義務を果たしていなかった納税者としてマークされます。
事業者は毎年申告義務が生じますので、申告の有無はもちろんのこと、申告内容も厳しく確認されます。
税務署が調査対象者を選定する場合、同じ申告内容であれば過去に不正等を行った納税者を優先的に調査しますので、無申告が指摘された事実は調査後も影響します。

無申告者は調査が入る前に申告書を提出すること

申告義務がある人が申告していない場合には、税務調査が入る前に申告書を提出してください。
加算税の税率は調査前であれば5%に軽減されますし、税務調査の連絡が入ったとしても調査着手前であれば適用税率は10%です。
期限後申告は、期限内に申告書を提出した人に比べれば税務署への心証はよくありませんが、税務署から要注意人物として警戒される基準はワンランク下がります。

まとめ

無申告事案の場合、自宅に税務調査官が突然訪れることもありますので、申告漏れに気が付きましたら、早めに期限後申告書を提出することを推奨します。
事業者については、複数年分が調査対象となるため、無申告の状態であることは大変危険です。
事業者以外の個人についても、不動産等を売却した際は申告が必要になりますので、忘れずに手続きしてください。

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