税務調査の対象となりやすい会社の特徴と税務署が注視するポイント 

税務調査を受けやすい会社には特徴があり、要因を取り除けば調査対象となる確率を下げることができます。
本記事では、税務署が調査を実施することが多い会社の特徴と、税務署が調査対象者を選定する際に注視しているポイントについて解説します。

税務調査の対象となりやすい会社の特徴

次の条件に当てはまる会社は、税務調査の対象となりやすいです。

事業規模・利益が大きい会社

法人税は利益が大きくなれば税率は上がりますし、事業規模が大きければ利益の額も多くなります。
税務調査は増差税額を得るために実施しますので、大企業はもちろんのこと、利益が大きい会社は調査対象となりやすいです。

不正割合が高い業種の会社

世の中には数多くの仕事がありますが、業種によって調査の受けやすさは異なります。
申告誤りや不正の事実が把握できている会社は調査対象となりますが、不正割合の多い業種についても他の業種より調査を受けやすいです。
同程度の事業規模の会社が複数ある場合、税務署は増差税額が見込まれる企業を調査対象として選定する傾向にあります。
たとえば、夜の仕事関係は脱税を摘発されているケースが多いため、調査を受けやすい業種です。
夜の仕事関係以外にも、コンサルティングや建築関係、医療関係など不正割合の高い業種はあるため、会社がこれらの業種に該当する場合には、調査を受ける確率が高くなります。

同業他社よりも利益率が低い会社

利益率は業種によって目安となる数値が存在し、業界の平均よりも利益率が極端に低い場合、売上除外や経費の水増しが疑われる可能性があります。
実際の収支を申告していれば利益率が平均から外れていても問題ないですが、税務署は申告内容を確認するために税務調査を実施することもあるので気を付けてください。

無申告の会社

利益が発生しているのにも関わらず申告書を提出していない会社は、通常よりも厳しい調査を受けることになります。
税務調査は実施する旨の連絡が事前に入りますが、無申告の場合には無予告で税務調査が行われることもあります。
無予告の調査の場合、調査対策を講じる猶予がありませんし、悪質性が極めて高い事業者に対しては、マルサでも知られる査察が調査担当者となるので要注意です。
査察が実施する調査は強制調査なので、納税者の意思に関係なく書類等を調べることができますし、最悪の場合、逮捕されるリスクもあるので申告手続きは忘れずに済ませてください。

海外取引が多い会社

脱税の手法として近年用いられているのが、タックスヘイブンを利用した税金逃れです。
合法的に納税を回避する手段も存在する一方で、違法な税金逃れは脱税であることから、海外取引が多い企業は調査対象になりやすいです。

過去の税務調査で不正を指摘された会社

過去の税務調査を受けた場合、調査結果は税務署に事績として残ります。
不正を働いた事業者は再び脱税等を行う可能性があるので、調査後に適正な申告をしているかをチェックするために数年後に再び調査を実施するなど、脱税による影響は調査後も続きます。

創業4年目に突入した会社

税務調査は5年前まで遡って調査することが認められていますが、一般的には3年分の申告書を調査対象とすることが多いです。
設立して間もない会社は申告書を提出していませんし、設立してから数年間で倒産する会社も多いことから、設立後3年以内に税務調査を受ける会社はそこまで多くありません。
しかし創業4年目に突入すると経営も軌道に乗りますし、税務署に3年分の申告書が提出された状態になりますので、適正申告を促す意味も込めて調査を実施することがあります。

税務調査に関して勘違いされていること

世間的に調査対象にならないと思われている会社でも、調査対象になるケースは多々ありますので注意してください。

個人・中小企業も調査対象になる

税務調査は大企業や不正をしている会社だけでなく、個人事業者や中小企業も調査対象となります。
個人事業者と企業は支払う税金の種類が違うので、調査部署は別ですし、個人事業者と企業では調査対象となる確率や調査を受けやすい事業者の特徴も異なります。
また、事業規模が小さくても不正は摘発対象となりますので、中小企業についても調査対策は不可欠です。

赤字会社も調査対象になる

税務調査は税収を増やすことが目的であることから、赤字申告であれば調査を受けないと思われるかもしれません。
しかし黒字にもかかわらず赤字申告と偽って申告している企業もありますし、繰り越した損失金額は翌年以後の利益と相殺できるため、赤字申告も調査対象になります。
消費税の申告の場合、赤字申告で還付金を受け取ることができますが、売上や経費に対する消費税を偽ることで、不正に還付を受ける事業者も存在することから、赤字申告だけを理由に調査対象から外れることはありません。

税務調査は何度も実施されることがある

事業者の場合、事業を継続している限り常に税務調査を受ける可能性はゼロにはなりません。
前年に税務調査を受けたとしても、その後に提出した申告書の内容に誤りがあれば再度税務調査の対象となりますし、不正を抑制するために調査を周期的に行うこともあります。

税務署が調査対象者の選定で注視しているポイント

税務署は調査対象者を選出する際、次の事項をチェックしています。

前年比で経費が増減している原因

売上が同程度なのにもかかわらず経費が増加している場合、税務署は経費の水増しを疑います。
法律の範囲内で経費を増やすことは問題ありませんが、事業には必要としない支出も経費計上しているケースもあることから、支出の内訳を注視しています。
法人税の申告書では経費の詳細を確認することはできず、添付資料でもすべてを把握することはできません。
そのため、前年よりも経費が大幅に増加しているときは、税務調査で支出内容をチェックすることがあります。

過去に実施した税務調査の有無と結果

税務署が調査対象者を選定する際、必ず過去の調査状況を確認します。
税務調査を受けた経験があったとしても、調査結果が申告是認であれば、調査の優先順位は下がります。
反対に、過去の税務調査で重加算税を課されている場合、再び脱税が行われていないか確かめるために調査を行うこともあるなど、過去の調査状況も調査対象者の選定に影響します。

赤字と黒字が反転した根拠

赤字は一定期間内であれば黒字と相殺することができるため、損益が反転したときも調査対象となりやすいです。
赤字から黒字、黒字から赤字に転換した年は、会社の経営状況が変化した時期でもありますので、状況を確認するために税務調査を行うことがあります。

SNSの発言と実際の申告内容の差異

税務署は、事業者がSNSやインターネット上で発信している情報も、調査対象者を選定する際の参考としています。
たとえば売上高についての発言をしていれば、発言内容と申告内容が合致しているか確認しますし、事業の盛況具合と申告内容に大きな相違がないかもチェックしています。
最近では節税コンサルタントを行っていた事業者が逮捕された事例も発生しており、大々的な節税を謳っている会社やそのコンサルタントを利用している会社は、税務署だけでなく査察から狙われている可能性もあるので要注意です。

まとめ

調査対象となる条件に該当する項目が少なければ調査を受ける確率は低いですが、該当項目が多い場合には、調査を受ける確率が高くなります。
調査を受けないためには、適正申告を行った上で、会社の事情に応じた対策を行うことが大切です。
表面上だけの対策は逆効果になることもあるため、都合がいい節税話には気を付けてください。

おすすめの記事