現金管理の重要性。税務調査で取引内容は細かくチェックされる

現金取引は形跡が残りにくいため、売上を誤魔化しても税務署にバレないと思うかもしれません。
しかし現金商売の事業者は税務調査の対象になりやすく、調査では取引内容を細かくチェックしますので、調査対策として現金管理はとても重要です。
本記事では、税務調査で現金に関する事項を調べる理由と、調査を受けた際の対処法について解説します。

調査担当者が現金取引を重点的に調べる理由

税務調査では申告に関する事項は一通り確認しますが、現金取引については下記の理由から細かい部分まで調べます。

現金取引は脱税が行われやすい取引

税務署が現金取引を注視しているのは、他の取引に比べて脱税を行いやすいからです。
クレジットカードやスマホ決済など、現金以外の方法で取引するケースも増えていますが、インターネットを経由しての取引については必ず履歴が残ります。
納税者が取引履歴を隠したとしても、取引に関する履歴は運営会社が保存していますので、調査担当者は金融機関や取引先を調べれば、取引に関する実態を容易に把握することが可能です。
一方、現金取引は証拠となるものが残りにくく、レジスターを使用していない事業者においては、レシートの控えで1日の売上を確認することもできません。
売上金額を確認する手段が無ければ、計算ミスが起った際に対処するのが難しいですし、1日に何度も取引する事業においては、計算誤りの積み重ねが多額の申告漏れに繋がることもあります。
そのため税務署は税務調査で現金取引について必ず調べますし、不明点があればすぐに確認し、誤りが判明すれば追徴課税の対象になります。

現金管理はずさんになりやすい

会計ソフトを利用している事業者は、銀行口座やクレジットカードなどと連動させることで仕訳を自動化するなど、取引の計上漏れを防ぐ対策を講じています。
しかし、現金取引については手動で記帳等をしなければなりませんので、税務調査で現金取引の仕訳が正常に行われているかチェックします。
現金管理がしっかりと行われていない場合、他の取引も適切に処理されていないことが疑われてしまいますので、意識的に管理をしなければなりません。

調査担当者が現金実査で確認する事項

現金実査とは、現金の残高と帳簿残高の整合性の確認や、実際に存在する現金残高を確認する行為をいい、税務調査でも現金実査は行われます。

現金の計上漏れの有無

税務調査は申告内容に誤りを指摘し、正しい内容の申告および納税を行わせるために実施します。
計上漏れの現金が存在すれば、その時点で申告書を適正に作成することはできませんので、税務調査においては現金の計上漏れがないかチェックします。
また現金の管理状況を確認するために、調査担当者は以下の事項についても尋ねてきますので注意してください。

  • 売上発生時の現金の管理方法
  • 現金売上の計上時期
  • 閉店後の現金管理の担当者
  • 銀行等への入出金の担当者
  • 現金残高と帳簿残高の整合性の確認頻度

実際の現金残高と帳簿残高の差異

現金残高の数字と帳簿残高の数字に差異が発生していれば、帳簿書類を正しく作成することはできません。
数字が合わないのは領収書を受け取っていないケースや、仕訳が行われていないなどの要因が考えられます。
現金の残高と帳簿上の残高の差異が大きいと脱税が疑われてしまいますので、税務調査が実施される前に差異が生じた原因を解明してください。

現金・預貯金を管理する能力

個人事業主や同族会社の場合、経営者がお金を管理することになるため、現金管理がずさんの場合、申告誤りが発生する可能性が高いです。
現金は事務所の金庫や銀行の貸金庫に隠すなど、脱税に用いられることが多いため、調査担当者は現金の管理状況を調査時に必ず確認します。
飲食店や建設業など現金取引が多い業種においては、現金の不適切な管理が申告誤りに直結しますので、調査対策として管理能力があることを示すことも必要です。

経営者等の個人通帳との混在

事業用の通帳と個人通帳が混在していると、帳簿書類を正しく作成することができません。現金は銀行等に預けることも多く、税務署は銀行への入出金の履歴も調べます。
脱税するために簿外預金を用意している経営者も存在することから、通帳の管理状況も尋ねられますので、事業用の通帳と個人通帳は分けることはもちろんのこと、保管場所にも気を付けてください。

税務調査で指摘されないための現金管理の方法

現金商売の事業者でも、現金を適切に管理していれば税務調査を受けたとしても問題点を指摘されませんし、調査担当者の主張に対して反論することができます。

現金残高と帳簿残高の数字を一致させる

現金管理で最も重要となるのが、実際の現金の残額と帳簿上の残高を一致させることです。
数字が一致していれば、正しい内容の申告書を作成することができますし、調査担当者に対して現金管理をしっかり行っていると印象付けることができます。
基本的な事項ですが、税務署からの指摘を避けるためには基本を守ることが大切ですので、定期的に実額と帳簿残高に差異が発生していないか確認してください。

領収書等は破棄せずに保存すること

事業者には帳簿書類の保存が義務付けられており、種類に応じて一定期間保存しておかなければなりません。
青色申告の場合、仕訳帳や総勘定元帳、現金出納帳などの帳簿は7年の保存期間が定められており、請求書や契約書など、取引に関して作成した書類の保存期間は5年です。
現金取引に関する書類等を保存しておかないと、経費計上が認められないなどの問題が生じます。
税務署は物的証拠を重視しますので、関係する帳簿書類は保存するとともに、書類等を紛失した場合には取引相手に写しを求めるなどの対処をしてください。

第三者が確認しやすいように帳簿書類等を管理する

税務調査は任意調査なので、調査担当者が勝手に帳簿書類を調べることはしませんが、調査に必要な事項が解明されるまで調査は終わりませんので、適宜書類等を提示することになります。
帳簿については作成する際のルールがある一方で、現金管理には細かい規定が存在しないため、第三者でも確認しやすいよう、現金取引を行った際の管理方法を説明できるようにしてください。

税務調査では現金以外の取引についても調べる

現金管理は調査項目の一つであり、現金管理を適切に行っていたとしても、それ以外の場所で計算誤りがあれば、申告誤りの指摘を受けることになります。
現金商売の業種でも、インターネット取引を行うことはありますし、銀行への振り込み等は行いますので、現金取引以外についても適切に処理することが大切です。
税務調査の対象となった場合、事業に関する内容は一通りチェックしますので、どの部分を調べられたとしても問題が発生しないよう、日頃から管理を怠らないでください。

まとめ

現金商売の業種は税務調査の対象となりやすいだけでなく、調査を受けた際に申告誤りを指摘されやすいです。
調査対策は売上や経費の帳簿書類の管理を適切に行っていることが前提であり、現金取引の少ない業種についても基本的な対策方法は同じです。
税務調査は1度も受けないことが最善ですが、周期的に調査が実施されることもあるので完全に回避するのは困難です。
そのため調査対象となったとしても、申告誤りを指摘されないように準備しておくことも大切ですので、顧問税理士に相談しながら現金管理のしかたを見直してください。

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