スクラップ収入は税務調査の対象となりやすいので要注意

製造業や建設業の企業が税務調査を受ける場合、スクラップや廃材の処理のしかたについて聴取されます。
スクラップを処分した際に発生する売上が計上されていなければ指摘されますし、意図的に売上から除外していたと判断されれば重加算税が課されますので要注意です。
本記事では、税務調査で問題となるスクラップ処分と、調査時に税務調査官がチェックするポイントについて解説します。

製造業・建設業は税務調査の対象となりやすい業種

税務調査は業種を問わず実施されますが、数ある業種の中でも製造業と建設業は調査を受けやすい業種です。
税務署には毎年多くの申告書が提出されており、人員的な理由からすべての申告書を調査することはできません。
そのため税務調査は不正が多い業種など、費用対効果が見込める事業者を中心に実施する傾向にあります。
製造業・建設業に分類される業種は、毎年のように不正発見割合が高い業種としてランクインしていますので、申告内容に不審点があった場合には調査対象となりやすいです。
また製造業・建設業においては、スクラップや廃材の処理方法が要調査項目となっているため、適切に処理していない場合、調査で指摘される可能性が高いです。
申告書を適正に作成していれば調査を受ける確率は下がりますが、不正が多い業種に対しては牽制目的で調査を実施することもあるため、調査を完全に回避するのは難しいです。

税務調査でスクラップ処分が指摘されやすい理由

税務調査では、次の理由からスクラップの処分について指摘が入りやすいです。

スクラップの売却代金は課税対象

鉄くずなどを処分する場合、費用が掛かることもありますが、専門業者に買い取ってもらえるケースも多いです。
スクラップや廃材であったとしても、買い取りしてもらえるのであれば、売却代金は収入として計上しなければなりません。
スクラップは鉄などの金属を加工する際に発生するものなので、売却代金の大部分は利益となることから、税務調査ではスクラップが発生している頻度や数量、売却代金の確認が行われます。

スクラップの売却代金の申告漏れが多い

税務署は申告漏れや脱税の温床となりやすい事項は徹底的に調べますので、税務調査においては、スクラップがどの程度発生するのかを必ずチェックします。
スクラップは加工する際に発生するものなので、処分した際に受け取った金額を売上として認識しにくい部分もあり、申告漏れになってしまうケースも少なくありません。
一方で、本業以外で発生した収入は申告から外しやすいため、脱税手段として用いられやすいです。
スクラップの売却代金を申告していないケースはもちろんのこと、事業者が取り扱っている金属等の量に比べてスクラップの売却代金が少ない場合、調査担当者は売上除外を疑いますので注意してください。

現金買取は脱税の温床になりやすい

クレジットカードや口座振り込みは履歴が残るため、入出金の状況を確認しやすいです。
申告内容を偽ったとしても、調査担当者はクレジットカード会社や銀行を調査すれば、本来の取引内容・金額を把握することができます。
それに対し現金決済は形跡が残りにくく、クレジットカード決済等に比べ、売上の一部を除外するなどの仮装隠蔽行為がしやすいです。
スクラップの専門業者は現金で買取することが多いので、売上を偽りやすい状況下になることから、スクラップ関連の取引は税務調査で重点的に調べられます。

税務調査で指摘されやすいスクラップに関連する事項

スクラップを処分した際に発生する利益を適切に申告していれば、税務調査を受けたとしても問題になることはありません。
しかし、経営者が意図しない部分から、申告誤りの指摘を受けることもあるので注意してください。

役員・従業員が個人でスクラップを売却している

スクラップは会社の事業として金属等を加工する過程で発生するため、買取金額は会社の収入として計上しなければなりません。
スクラップの売却代金を隠す意図が無かったとしても、役員や従業員が無断で売却していた場合、法人税の申告内容としては売上の計上漏れとなります。
税務調査では年間の取引量などから、スクラップがどの程度発生するかを推計しますので、事前にスクラップの量と売上として計上している額に、整合性があるか確認してください。

棚卸資産の計上漏れ・時期誤り

製造業や建設業は仕入れを頻繁に行うため、数量を適切に把握できていないことがあります。
棚卸資産の計上漏れは指摘されやすく、事業規模が大きいほど把握漏れによる影響は大きいです。
耐用年数の誤りやスクラップ化した資産を処分した際の譲渡損益についても、適正であるかチェックします。
また、建設関係の工事は長期間に及ぶことも珍しくなく、工事が完了するのが翌期以降になることもあります。
事業年度をまたぐ場合、売上や経費の計上時期の誤りを指摘される事業者も多いので、適切な処理を心掛けてください。

スクラップ売上の誤りを指摘された場合

税務調査で申告誤りを指摘されれば、本税だけでなく加算税・延滞税も支払うことになりますが、状況次第では重加算税が課される可能性もあるので注意が必要です。

意図的な売上除外は重加算税の対象

期限内に申告書を提出している場合、過少申告加算税の課税対象となりますが、意図的な売上除外は重加算税の対象です。
意図的な脱税かどうかは客観的な状況も含めて判断し、スクラップを売却しているのにもかかわらず、売上として一切申告していない場合や、売上高を過少に偽っている場合は重加算税が課されます。
過少申告加算税の税率は10%ですが、重加算税の税率は35%と非常に高いです。
また無申告に対する重加算税になると、税率が40%になりますのでペナルティがより厳しくなります。
不正を行った事実は調査後にも影響し、その後に提出される申告書は毎回厳しく確認されます。
申告内容に少しでも問題点があれば再び調査を受けることになるので、脱税行為は厳禁です。

役員賞与として認定される可能性もある

役員が個人でスクラップを売却していた場合、法人の売上除外だけでなく、役員賞与として認定される可能性も出てきます。
役員報酬は、一定の条件を満たしていないと経費として計上できないため、法人は法人税として、役員は所得税として税金を支払うことになりかねません。

スクラップの売上除外は買取業者からの資料で把握する

スクラップの売上除外は、スクラップの買取業者から資料を入手し、申告誤りの事実を把握しています。
買取業者が定期的にスクラップを買い取っている事業者のリストがあれば、リストに掲載されている事業者の申告内容と買取内容の整合性をチェックします。
スクラップを売却した事業者の申告内容と、買取業者の資料の内容が一致しなければ、どちらかが取引内容を偽っていることを意味しますので、税務署は真偽を確かめるために調査を行うので気を付けてください。

まとめ

製造業や建設業が税務調査を受ける場合、スクラップの処理状況は必ず確認されますので、適切な処理が求められます。
取引相手がいる限り、売上を完全に誤魔化すことはできませんし、仮装隠蔽行為が判明すれば重加算税が課されることになります。
現時点で調査対応に不安がある方は、早めに税理士に相談していただき、問題点の抽出と改善策を講じてください。

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