税務調査の対象になる還付申告と調査後に税金が戻ってくるケース

税務調査は納税申告でなく還付申告に対しても実施されますが、調査を受けたとしても、申告内容に誤りがなければ追徴税額を支払うことになりません。
また調査時に税金の納め過ぎが判明すれば、税金が戻ってくることもありますので、今回は調査対象となる還付申告の種類と、税務調査で税金が還付されるケースについて解説します。

法人税の還付が受けられるケース

法人税は基本的に還付申告になることはありませんが、特定の条件を満たした場合には税金が戻ってくることがあります。

中間納付した法人税が過大だった

法人税の中間納付は、事業年度の途中で納税額の半分を前払いする制度です。
前事業年度の法人税の納付額が20万円を超えた場合、中間申告義務が生じ、確定申告の際は差額分の法人税を納めることになります。
実際の納付税額よりも中間納付で納めた法人税の方が多ければ、法人税を納め過ぎている状態にありますので、法人税の申告書を提出することで過大納付していた部分の税金は還付されます。

法人税の欠損金繰戻還付制度の利用

法人税の欠損金繰戻還付制度は、過去に発生した黒字と本事業年度で発生した赤字を相殺することにより、黒字に対して課されていた法人税が還付される制度です。
法人税の欠損金繰戻還付制度を適用するためには青色申告書を提出している必要があり、事業年度に欠損金額が生じた際、欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻すための還付請求書を提出しなければなりません。
本制度は払いすぎた法人税を戻すための制度なので、前事業年度が黒字でなければ利用することはできません。
また、欠損金繰越制度との併用適用は認められていないことから、状況に応じて制度を使い分ける必要があります。

更正の請求書の提出

更正の請求は、提出した申告書に以下のような誤りがあった場合、税務署に更正を求めるために行う手続きです。
提出した更正の請求書の内容が認められた場合、税務署は納め過ぎていた税金を還付します。

<更正の請求の対象となる申告誤り>

  • 税金の過大納付
  • 翌期へ繰り越す欠損金の過少申告
  • 翌期へ繰り越す連結欠損金の過少申告
  • 還付税額の過少申告

更正の請求は申告期限を過ぎた後、提出した申告書の内容に誤りを把握した際に行う手続きなので、期限内に既に提出した申告内容を正す場合には、訂正申告書を提出することになります。
更正の請求書の提出期限は、原則法定申告期限から5年以内であり、期限を過ぎると原則更正の請求をすることはできません。
ただし、申告期限から5年を経過した後でも更正の請求が認められるケースはあり、たとえば法人税に係る純損失等に関する更正の請求の期間は10年です。
また課税標準等の計算の基礎となった事実に関する訴えについて、判決等によりその事実が異なることが確定したとき等など、後発的事由に基づく更正の請求は、事由が生じた日の翌日から2か月内であれば請求することができます。

職権による減額更正

税務署職員は、税務調査を実施した際、職権で申告内容を更正することができます。
納税者が修正申告の勧奨に応じない場合、税務署は職権により申告内容の誤りを正す更正処分を行いますが、税務調査において税金の過大納付が判明した際は、調査担当者が職権で減額更正を行い、納め過ぎた税金を還付することもあります。

税務調査で税金が還付されるケース

税務調査を受けた際、非違事項を指摘される確率は70%から80%程度と高いですが、非違事項を指摘されずに申告是認となる場合もありますし、税金の還付が発生するケースもあります。

税務調査により税金の過大納付が発覚した

税務調査は申告内容を正すために実施するものですので、納税額に誤りがあれば税務署は過少申告だけでなく、過大申告も正します。
税務調査は納税額を少しでも徴収する目的で実施することから、当初から還付金が発生する事案に対して税務調査を行うことは基本的にありません。
しかし、税務調査を実施したことで課税所得金額が減ることが判明するケースもあり、そのような状況においては、調査後に納め過ぎていた税金が戻ってくることがあります。

売上・経費の計上時期の誤り

事業者に対する税務調査は複数年分実施するのが一般的で、特定の年分に申告誤りがある場合には、その前後の年分も調査対象とすることが多いです。
申告誤りが発生する原因は様々あり、事業者については売上や経費の計上時期の誤りにより発生することもあります。
売上の計上漏れがあればその年分の所得は増加しますが、誤って売上を計上していた年分については売上高が減少しますので、計上時期がずれていた金額が大きい場合には還付が発生することも考えられます。

還付申告で注意すべきポイント

税務署は税金の払い過ぎには甘いですが、払い過ぎた税金を戻す行為への対応は厳しいです。

事実関係を確認するために実地調査を行うことがある

税務署は提出された申告書に誤りがあったとしても、申告誤りが納税額を減少するものであれば納税者に連絡することは少ないため、税金の納め過ぎに気が付きましたら自主的に更正の請求書を提出しなければなりません。
更正の請求は納税者が行使できる権利ですが、請求が認められるかは税務署の判断であり、税務署が更正の請求を認めた場合に限り税金は還付されます。
更正の請求が認められなければ税金は戻ってきませんし、提出された申告書の内容に疑義があれば、更正の請求書が提出されたタイミングで実地調査を行うこともあるのでご注意ください。

法人税の欠損金繰戻しの還付は調査対象になりやすい

法人税の欠損金繰戻還付制度は、欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出するのと同時に、欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出することになります。
税務署が請求書の内容を認めれば法人税は還付されますが、更正の請求と同様、還付請求書が提出されたことを理由に税務調査が実施されることもあります。

消費税の還付申告は要調査項目の一つ

消費税は課税売上高に対する消費税から、課税仕入れに対する消費税を差し引いた額を納税または還付します。
課税売上高に対する消費税よりも課税仕入れに対する消費税の額の方が大きければ、消費税の申告書を提出することで還付金を受け取れます。
一般企業も取引のグローバル化が進んでおり、海外取引については消費税が免税になることもありますが、免税制度を悪用して消費税の還付金を不正に受け取ろうとする事業者も一定数存在します。
国税当局は消費税の不正還付を取り締まるために、消費税の還付申告に不審点があれば積極的に調査をしており、特に免税取引がある場合には注意が必要です。

まとめ

税務署は納税額が過少であれば税務調査で指摘する反面、税金の過大納付に関して指摘することは少ないため、税務調査を回避する目的だけでなく、税金を余分に支払わないためにも適正申告は大切です。
申告内容の誤りに気が付いた際は更正の請求書を提出することになりますが、法人税の欠損金繰戻しの還付請求や更正の請求は、必要書類が添付されていないと請求が認められません。
提出した申告書の内容や請求書の内容に疑義がある場合、請求書が提出されたタイミングで税務調査が実施されることもありますので、顧問税理士と相談した上で手続きを行ってください。

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