税務調査が来やすい時期。6月に調査が実施されないのは本当なのか

税務調査は年間通じて実施されていますが、調査があまり行われない時期も存在します。
本記事では、税務調査が来やすい時期と来ない時期の違いと、法人税の税務調査を受けやすい時期について解説します。

税務調査が時期によって実施件数に波がある理由

税務調査の実施件数が時期によって異なるのは、国税当局側の人員的な問題が主な要因です。

6月・7月は人事異動の影響で調査件数が減少する

税務署職員の人事異動は7月初旬に実施されるため、6月末から7月初旬は調査件数が減少します。
国家公務員は毎年人事異動が行われ、税務署職員については2~3年で転勤するのが一般的です。
税務調査を実施するのは、基本的に納税地を管轄している税務署の職員であり、担当職員が転勤となった場合には、管轄税務署の他の職員が担当を引き継ぐことになります。
調査担当者が変更になれば職員同士で引継作業を要しますし、新しい担当者は納税者の情報をイチから把握しなければなりませんので、効率の観点から人事異動のタイミングを外して税務調査を行うことが多いです。
ただし、最近では人事異動が完了した直後に実地調査を行えるよう、6月中に税務調査の事前連絡を行う傾向にあるため、人事異動前後に税務調査が全く行われないわけではない点には注意が必要です。

個人の確定申告時期は調査件数が少なくなる

法人税の申告書の提出期限は、事業年度終了日の翌日から2か月以内となっているため、法人ごとに申告書を提出するタイミングが異なりますが、個人が納めることになる所得税・消費税・贈与税の申告期限は3月に統一されています。
申告書の提出件数は所得税だけでも2,200万件を超えており、個人の確定申告は法人とは違い、確定申告相談会場を設置することから、税務署職員は提出された申告書の処理だけでなく相談対応にも追われます。
確定申告時期でも税務調査は行われますが、他の時期と比較すると調査件数は少なく、特別な事情が無い限り、個人が申告する税金の調査を確定申告期間中にスタートさせることはほとんどありません。

税務調査が来やすい時期と来ない時期

税務調査が来やすい時期は共通していますが、税務調査が来ない時期は税目ごとに異なります。

税務調査の最盛期は7月から12月

税務調査は税金の種類に関係なく、7月から12月の半年間が最も実施される時期です。
調査担当者が自宅や事務所に訪れて行う実地調査は、調査が完了するまでに1か月から2か月程度かかることから、税務調査を実施する連絡は11月中旬ごろまでに入る可能性が高いです。
12月や1月にも調査は行われますが、年またぎは税務署も避ける傾向にあるため、年末に新規の調査連絡が入ることは少ないです。

1月から3月は個人に対する調査件数は大幅に減少する

確定申告対応は個人課税部門の職員が中心となって実施しますが、資産課税部門や法人課税部門の職員も確定申告事務に携わることから、他の月に比べて調査件数は全体的に少ないです。
特に個人事業主に対して調査を行う個人課税部門は、確定申告関連事務に従事するため、1月から3月の個人に対する調査件数は大幅に減ります。
所得税の確定申告期間は2月からですが、実地調査が完了するのに1か月以上かかることから、個人が関係する税金の実地調査は1月から着手件数が減る傾向にあります。
確定申告が終了した後の4月から6月の期間は、提出された確定申告書の内容を確認する作業に入り、明らかな誤りがある申告や無申告者が調査対象になることが多いです。
7月から12月の時期に比べると個人事業主が税務調査を受ける確率は低いですが、直近に提出した申告書の内容に誤りがあった際は、4月以降であれば調査が実施される可能性が高くなるので注意してください。

法人に対する調査は年間通じて実施される

法人税の申告書は企業の決算期によって提出するタイミングが違いますので、年間通して確定申告書に関する処理を行っています。
企業は3月・9月決算が多く、それらの申告時期になりますと税務署には大量の申告書が提出されます。
しかし、個人の確定申告とは異なり、法人税の申告書の提出時期はある程度分散されていますので、税務署は1年を通して法人税の税務調査を実施することが可能です。
また、法人課税部門の職員も所得税の確定申告対応に従事することから、1月から3月までの調査件数は減りますが、税務調査が中断することはありません。

法人税調査が実施されやすいタイミング

法人税調査は年間通じて税務調査が行われますが、企業の申告状況や申告書を提出したタイミングによって調査が来やすい時期が存在します。

申告書を提出してから半年後

法人税の調査対象になりやすい時期は、確定申告書を提出してから半年後です。
税務署は申告書が提出された時点で申告内容を確認し、明らかな計算ミス等や提出書類の不足がある場合にはすぐに連絡が入ります。
計算ミスが無かった申告書については、税務署で蓄積している資料等で申告漏れの有無を調べ、申告内容に疑義が生じた場合に調査対象者として選出されます。
税務署が調査対象者を選定し、納税者へ連絡するまでには数か月かかることもあるため、申告書を提出してから半年後に調査の連絡が入ることが多いです。

法人を設立して3年を経過した企業は調査を受けやすい

事業者に対する調査は単年ではなく、複数年分を調査することが多いです。
3年分の申告書を調査対象とするのが一般的ですが、脱税等の疑いがある場合には調査範囲を拡大することもあります。
複数年分の申告書をまとめて調査する関係上、申告書が1年分または2年分しか提出されていない状況下で調査が実施される可能性は低いです。
一方で、3年分の申告書を提出しますと、税務署も税務調査の対象リストに加えますので、調査を受ける確率が一気に上がります。

現在は6月でも税務調査は実施される

人事異動がある関係で6月は税務調査が行われにくい傾向にありますが、調査がまったく実施されないわけではありません。
6月に調査を実施するために4月や5月中に調査の連絡を入れる税務署もありますし、人事異動が完了した直後に税務調査が実施できるように、6月の時点で調査の日程調整を行うケースも増えています。
調査が本格的に実施されるのは7月から12月ですが、法人税については年間通じて税務調査が行われる点には気を付けてください。

調査対策はどのタイミングで講じるのがベストなのか

税務調査はいつ実施するかは税務署の裁量に委ねられていることから、納税者は税務調査がどのタイミングで実施されたとしても、対応できるように対策することが大切です。
税務調査を行う旨の連絡が入ってから講じることができる対策もありますが、提出している申告書の内容は変えることができません。
申告内容に誤りや疑義が無ければ税務調査は実施されないため、最も重要となるのが適正な申告書を提出することです。
申告書への虚偽記載や証拠の隠滅は脱税行為とみなされ、重加算税が課されることになりますので、日頃から法律で認められた範囲内での対策を講じるようにしてください。

まとめ

調査対象者が個人と法人で税務調査が実施される時期は違いますが、7月から12月が調査の最盛期であることは共通しています。
税務調査の連絡が入った場合、調査の日程調整だけでなく、申告書を作成するために使用した帳簿書類を用意しなければなりません。
申告誤りを指摘されなければ追徴税額を支払うことになりませんが、調査を受けた納税者の70%以上は非違事項を指摘されていますので、税務調査を受けないことが肝要です。

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