税務調査の対象となりやすい個人事業主の特徴と回避するための対処法

税務調査は法人や富裕層だけでなく、一般の方々に対しても実施されます。
個人事業主は事業規模以外にも、調査を受けやすくなる条件がありますので、今回は調査対象者となりやすい個人事業主の特徴と、調査を回避するための対処法について解説します。

所得税の調査件数は年間60万件

国税庁が令和4年11月に公表した「令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、所得税に対して実施された税務調査等は599,747件です。
所得税の申告書は2,200万件以上提出されていますので、申告件数に対しての調査件数の割合は低いと思われるかもしれません。
しかし所得税の申告の大半は、年金受給者や医療費控除等を適用して還付申告を受ける方々であり、事業所得者で納税人員に絞ると申告件数は175.4万件に留まります。
税務調査は税金の過少申告を是正するために実施するので、納税申告を行っている個人事業主が調査対象となりやすいです。
また調査を受ける確率は、個人事業主に限定すれば数%程度はありますので、何年も事業を営んでいる方であれば、どこかのタイミングで調査を受けることになったとしても不思議ではありません。

税務調査の対象となりやすい個人事業主の特徴

この章で紹介するケースに1つでも該当する個人事業主は、税務調査の対象となりやすいです。

前年比で売上が大きく伸びている

所得税は利益に対して課される税金ですので、利益が多く発生している事業者ほど納める税金は多くなります。
調査を担当する税務署職員は、調査の成果として増差税額が求められている関係上、増差税額が見込めない個人事業主への調査を積極的に行うことはありません。
一方、前年比で売上が大きく伸びた事業者は利益も増えている可能性が高く、少しでも税金の支払いを抑えるために、色々な節税手段を用いるようになります。
急激に売上が伸びた場合、違法な手段による節税を行う事業者もいますので、税務署は売上が伸びている事業者ほど正しく申告しているかチェックします。

前年比で経費だけが増えている

売上が伸びていなくても、前年と比べて経費だけが増えている場合、税務調査の対象となりやすいので要注意です。
法律の範囲内で税金を減らす行為は節税ですが、不正なやり方で税金を減らす行為は脱税です。
事業者が経費として計上できるのは、事業に直接要した費用に限られ、経費の水増しはもちろんのこと、事業とは関係のない支出を経費として計上することはできません。
また個人事業主は法人と違い、事業用の支出と私用の支出が混在しやすい点にも気を付ける必要があります。
事業を営んでいる場所が店舗兼住宅であれば、店舗部分に関連した支出しか経費にできず、誤って住宅部分の支出を経費計上してしまうと税務調査で指摘されます。
最近ではSNS等で節税方法を周知する人もいますが、税理士など専門家ではない人が情報発信していることも多いです。
素人の節税方法を鵜呑みにすると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性がありますので、法律上で認められた節税方法であることを確かめた上で税金対策を講じなければなりません。

同業種に比べて利益率が低い

税務署は、同業種との相違点の多い事業者を調査対象者として選定することもあります。
同じ業種でも事業者ごとに売上や経費は違いますし、利益率の高低自体が問題になることはありません。
しかし他の同業種の事務者と比べて明らかに利益が少ない場合、経費の水増し等を疑われますし、申告漏れが多い業種については、少しでも疑われるポイントがあると調査対象になる確率が格段に上がります。

確定申告をしていない

税務調査は申告している人だけでなく、無申告の人に対しても実施されます。
税務署に届出をしていなければ無申告はバレないと思うかもしれませんが、税務署は色々な方法で情報を収集しています。
たとえばSNSで集客している事業者であれば、Twitter等のアカウントから事業実態を把握することもありますし、取引先が税務調査を受けた際に、無申告の情報を入手することもあります。
申告をしていないことが判明すれば、税務調査で無申告が指摘されますが、無申告(期限後申告)に対するペナルティは、計算ミス等による修正申告よりも重いです。
事業を営んでいる以上、存在を隠し通すことは不可能ですので、申告手続きは忘れずに行ってください。

過去に税務調査で指摘を受けた経験がある

税務調査を受けたとしても、申告誤りを指摘されなければ問題ありません。
また税務調査で申告漏れが無かったと認められれば、税務署から申告内容が正しかったことを証明する「是認通知」を受け取ることもできます。
しかし、個人事業主が税務調査で申告誤りを受けた場合、要注意人物として税務署からマークされることになります。
税務署にマークされてしまうと、細かなミスでも税務調査に移行する可能性があるため、過去に税務調査を受けた経験がある人ほど申告内容に気を付けなければなりません。

個人事業主が税務調査を回避するための3つのポイント

税務調査を100%回避する手段は存在しませんが、次に紹介する方法を組み合わせることで、税務調査を受ける確率を下げることは可能です。

申告漏れ・計算ミスをゼロにする

税務調査を回避するために最も重要なのが、適正に申告することです。
申告内容が適正であれば税務署が調査を実施するメリットがなく、万が一税務調査を受けたとしても、申告内容が正しければ追徴課税は発生しません。
申告誤りが単純な計算ミスであったとしても、税務署の目に止まった時点で税務調査を受ける確率は一気に上昇しますので、正しい内容の申告書を作成することが何よりも大切です。

青色申告で手続きを行う

個人事業主の場合、白色申告と青色申告の2種類の申告方法がありますが、青色申告の方が税務調査を受けにくいです。
白色申告は一般的な申告方法をいい、青色申告は複式簿記による帳簿作成などの条件を満たすことで利用できる申告方法です。
税務署が実施できる調査件数には限りがあるため、申告誤りの可能性の高い事業者から優先的に調査を行います。
青色申告は適切な申告手続きを行う意思表示にもなりますので、節税効果だけでなく、調査対策としても青色申告で手続きするメリットがあります。

税理士に申告書の作成依頼をする

税理士は税の専門家ですので、同じ内容の申告書が2つあった場合、税理士が関与している申告書の方が調査を受けにくい傾向にあります。
また税理士に申告書の作成依頼をする場合、書類添付制度を利用するのも選択肢です。
書類添付制度は、税理士が税務署に代わって納税者から申告に関する聞き取りを行い、その内容をまとめた書類を申告書に添付する制度です。
税務署が確認したい事項をあらかじめ税理士が聴取すれば、税務調査を実施する必要がなくなります。
そのため調査を受ける確率を可能な限り下げたい方は、書類添付制度の活用も検討してください。

まとめ

税務署の調査担当者の人数を踏まえると、すべての個人事業主を調査することは難しいことから、対策を講じれば可能な限り調査は回避できます。
税理士は多くの納税者の申告書を毎年作成していますので、最新の税制だけでなく経験も蓄積されています。
世間で広まっている調査対策は必ずしも正しいとは限りませんので、税務調査に関する相談は税理士事務所にお尋ねください。

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